No.77
夏には向かない急坂の続くハードな山
[乳頭山(1478m・岩手県雫石町――2014年8月24日)]
 3週間ぶりの山。あの灼熱の水切れ地獄、「真昼岳峰越ルート」以来だ。
この時期の山歩きは3リットルの水が下山時には空になるほど、渇きとの闘い。いくら水を呑んでもおしっこは一滴も出ない。汗っかきなので他の人より大量の水を持っていくから、とうぜんザックは重い。大量の汗をかく。大量の水を呑む。さらに寝不足が加わる。朝4時起きなのだ。便通も悪い。だから夏山は嫌いだ。でも下山後の壮快さはなにものにもかえがたい。これにかわる快楽は、この年になるとなかなか見つけられない。で、やむなく寝不足便秘不安感を抱えたまま山に入ることになる。ひたすら水を呑み続けるために山に出かけていくのと同じである。水を呑むのは達成感を得るための代償のようなもの、と割り切るしかない。

 今回の山は乳頭山(岩手側の呼び名は烏帽子岳)。それを岩手県・滝ノ上温泉側から登り、千沼ヶ原を抜け、乳頭山(烏帽子岳)に至る往復8時間のハードなコース。以前にも「山の学校」メンバーで登っているが、予想以上にきついコースで、昼前に千沼ヶ原まで着けないことが分かり断念、引き返した。
 今回はぜひ完全踏破したい。天候は曇り。いつ雨が落ちてきてもおかしくない微妙な天候だ。でも暑さが大敵なので、ピーカンよりは曇りのほうが喜ばしい。
 登り口と下山口がちょっと違う。葛根田川沿いにある地熱施設口から登り、下りるのは、その横にある滝ノ上温泉口という、周回コースだ。
 歩き始めて1時間、平ヶ倉沼に着く。ここまでは以前の記憶に残っていた。ここから先の記憶はない。千沼ヶ原までの3時間、ひたすら急坂を登り続けた。夏には向かないハードな山だったことに、平ヶ倉沼を過ぎてから気がついた。

平ヶ倉沼と岩手山の眺望

千沼ヶ原で記念写真
 本来の予定では千沼ヶ原湿原まで3時間20分、そこから乳頭山まで1時間20分。登りに4時間20分で山頂へ。下山は1時間半かけて白沼に下り、そこからさらに1時間半をかけて滝ノ上温泉に帰ってくる。3時間を予定していた。
 それが千沼ヶ原ですでに4時間が経過していた。予定よりも40分も遅れている。
 千沼ヶ原湿原の木道で昼飯を食べた。この時点で山頂は断念、登りと同じコースを下山することに。計画通りに山頂まで行けば下山は夕方6時近くになる。朝夕はすっかり秋風が吹くこの時期に、その時間帯では危険が伴う。
下山途中で大学生のHが体力が尽きたように倒れ込んでしまった。熱中症か脱水症状なのか。なんとか下山したが、かなり弱っているのは確か。早めに病院に連れて行かなければならない(その後、病院で診察を受け、風邪と診断された)。
 温泉は雫石町にある「ゆこたんの森」。正式な名称は雫石南網張ありね温泉という木造の品のある温泉だった。温泉の帰りは近くにあるソフトクリーム屋「松ぼっくり」でソフトを食べた。久しぶりのアイスだ。

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