No.290
月山森・強風で転倒、苦手な岩場の山
[月山森(1647m・山形遊佐町―2023年10月3日)]
 鳥海山塊の中にある横の山が月山森だ。その山腹からすぐそばに鳥海山山頂の外輪がよく見える場所にある山だ。あの有名な「心字」雪渓の横手にある山、と言えばわかりやすいかもしれない。
 朝5時起きで酒田に8時半前に着いた。昨夜は雨が激しかったのだが道路はすっかり乾いている。鶴間池の方向に車を走らせ、その先にある湯の台登山口がスタートだ。てっきり初めてのコースと思っていたのだが、「何度か七高山にこのコースから登っているよ」と同行の地元Sカメラマンさんに言われてしまった。覚えていないだけなのだ。
 鳥海山特有の石畳の歩きにくい道を20分ほど登ると、「滝の小屋」が見えてきた。この建物をみて「ああ登ったことがある」とようやく気が付いた。
 この小屋から藪の中に入り、本格的な登りになる。岩場や渡渉が連続する難しいコースで、ストックがジャマになる。ここからノーストックで、手で岩を抱きかかえながら登るロッククライミングだ。
 岩場を抜けると今度は八丁坂の登りだ。ここでなんと雨が降ってきた。あわててレインウェアを着る。ここで一度、「引き返そうか」とSカメラマンと協議したのだが、「もう少し上まで行ってみよう」と私の方から提案。前回の前岳で少し体調に自信が蘇ったので、体力的にもう少し頑張ってみたかった。なにせひさびさの1600メートル級の標高の山なのだ。

心字雪渓に雪がない!

7合目の河原宿
 雨はすぐに止んだが、そのかわり風が強くなった。それもあって汗をかかない。3リットルの水は減らないが、それはザックの重さも変わらないことを意味する。雄大な景色が心にゆとりを持たせてくれる。大きな山はこの景色が「水代わり」になる。唇を舐めると塩っぽい海風が西の方から吹いてくる。上には雄大な外輪山がくっきり眼前にそびえる。あの後ろに鳥海山の山頂がある。眼下には日本海と遊佐の町が遠くかすんで見える。
 八丁坂を超えると2時間で鳥海山7合目河原宿に到着。避難小屋は見るも無残に雪で崩れかかっている。一番ショックだったのは「心字雪渓」にほとんど雪が残っていなかったことだ。
 ここから山頂までは40分ほど。風は強くなるばかりだ。山頂の入り口まで到着したところで、ものすごい風で山頂は危険と判断、ここで引き返すことにした。まあ登ったも同然なので、よかったよかった、と山頂を見上げた瞬間、強風に煽られ、バランスを崩して岩場に転倒してしまった。それほど強い風だったのだが、「体幹が弱いなあ」という恥じらいのほうが強かった。
 風を防ぐために7合目河原宿まで戻ってランチ。そこで初めて左ひざ頭からかなり出血しているのが分かった。応急処置をして血を止め、痛みはないのでそのまま下山を開始。石と岩だらけの鳥海山の下りは、登りよりも体に直接衝撃を伝えてくるので、やっかいだ。月山森は難易度の高い中級の山だ。これを最後までなんとか登ることができた。

 下山後、自分で車を運転して「ツルハ」に寄り消毒液と絆創膏と包帯を買って応急処置。ホテルに戻って、明日は飛島に行く予定だったが大事をとってキャンセル、早めに家に帰ることにした。
 ランチや下山時は何の問題もなかったが、ホテルに入ってシャワーを浴びてから、すさまじい痛みが襲ってきた。ほとんど寝られない一夜を過ごしたのだが、擦りむいて出血しただけでなく、どうやら打撲もひどかったようだ。
 とりあえず旅先ではいろんな対処ができないのでホームグランド秋田に帰ってきた。明日は近所の整形外科で診察を受けてみよう(結果は骨に異常なし)。山でのケガなので山岳保険に入っているから保険申請すると「うちはレスキュー保険なのでヘリや救急車などを要請してないと保険は無理です」と断られた。そうかレスキュー専門の保険だったのか。

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