No.289
前岳・「一風一飲」の山に登る
[太平山前岳(731m・秋田市―2023年9月24日)]
 ようやく秋の風が吹き始めた。前回の屈辱を晴らすため友人Fさんを伴って前岳へ。Fさんと山登りをするのは初めてだ。気温は前回より10度近く低い25℃。これで風があれば、コンディションとしては申し分ない。「一風一飲」というのは私の造語で、「風が吹けば水一口分節約できる」という、汗かき、水飲みの切実な標語だ。人よりも1リットル以上水を消費するので、そのぶん荷物も重くなってしまう苦役の体験から生み出されたお粗末なコピーである。
 前岳は標高こそ低いが、山としては急峻で、岩場は滑り、登りが続く、けっこう難易度の高い山だ。過去3度、途中で引き返しているぐらいだが、今回は体力的には余力があった。最初から最後まで息が上がることもなかったのは、やはり気温によるものだろう。前回は35度近くの猛暑日に登る、という無謀さが大問題だったのだ。今回のスムースな山行がそのことを証明している。

山頂付近で語り合うひと

山頂で自撮り
 女人堂では山仲間のF女史にバッタリ。2カ月ぶりくらいだが、顔がふっくらして最初誰かわからなかった。
 前岳山頂付近で、この山の常連のような2人の男女が大声で会話していた。先日の大雨で旭又からの奥岳登山が難しくなったことを論じていた。とにかく旭又は駐車場も3カ所の橋脚もズタズタで、ここ数年で回復するような状況ではないのだそうだ。だから、この前岳、中岳、奥岳コースが太平山登山の、これからのメインルートになるのかもしれない、という。大変なことになったものだ。

 下山後、家でシャワーを浴び(最近は温泉にはいかない)、同行したFさんと事務所宴会で大いに盛り上がった。酒は一人で飲んでもうまくない。前日、東北のアウトドア情報をネットで発信しているという若い人が無明舎の取材に岩手県から来ていた。彼とのの話の中で出てきた「みちのく潮風トレイル」というのに興味を持った。宿に泊まりながら東北の見知らぬ太平洋側の街の長い道を歩く、というのは魅力的だ。山でなくとも「歩く」ことに関連していれば、もうそれだけで食指が動いてしまう。「歩く」ことが好きなのだ。

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