No.286
荒倉山・マキノスミレを初めて見た
[荒倉山(307m・山形・鶴岡市―2023年4月21日)]
 金曜日なのだが休みをもらって、酒田市のカメラマンSさんと鶴岡市の山に登った。低山だが庄内アルプスと呼ばれる山峰のひとつで、ここと高館山が有名だ。1時間ちょっとで山頂に立てるのだが、収穫はマキノスミレを初めて観たこと。普通のスミレと全く違う葉がついていて、その三角錐のユニークな葉っぱが特徴だ。あの牧野富太郎の発見になるスミレなのだそうだ。それ以外にも瑠璃草がいたるところに可憐な花を咲かせていた。
 山頂から海や月山を観る楽しみもあったのだが、すべて曇り空でダメ。天気予報に反して気温が低く、山中は寒いほど。眺望のいい場所を求めて山頂付近散策するが、曇天なのでどこも同じ景色とあきらめてランチにした。そこに突然、髭の仙人のような老人が現れた。失くした眼鏡を探しているとのこと。Sカメラマンの知り合いで、地元では有名な元山大農学部の林業の先生だそうだ。普段着でながくつを履き、リュックも背負わず、手にはクマ攻撃用の長い杖を持っている。クマが出てきたら、この杖で目を突くのだそうだ。

これがマキノスミレ

山中に出現したブナ
 下山は違うコースで降りたのだが、山は倒木が多くけっこう痛んでいる印象。この山は2度目だが、また登りたいという気持ちは持てなかった。同じ山脈にある高館山のほうがずっとバラエティに富み、魅力的、というのが正直な印象だ。
 山を降り、酒田市美術館に「熊谷守一 いのちを描く」展を観に行った。山形でなんで熊谷守一? と思ったからだが、これは天童市美術館収蔵品で、その天童出身の熊谷のパトロンが個人的に集めたコレクション展示だった。点数が少なく作品も均一で少しがっかり。熊谷の本格的な回顧展であれば全国規模で巡回開催されるはず。まあ20点以上の作品を観られただけでも幸運と思うことにしよう。

 温泉は、これも前回この山の帰りに入った湯野浜温泉「龍の湯」。入湯料700円の高級温泉だが、客は我々だけ。
 庄内の往復の車移動中、カーステレオでずっと福原希巳江が歌うアルバム「おいしいうた」を聴いていた。歌詞の一言一言がハッカのように心にしみてきた。何度聴いても飽きることがなかった。音楽にこんなに感動するなんて久し振りだ。

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