No.277
前岳・敗北感のナンチャッテ前岳
[前岳(773m・秋田市――2022年9月11日)]
 今日予定だった鳥海山が中止。一人で前岳に行くことにした。やはり月に2回は山行しないと、たちどころに身体がなまってしまう。
 天気が良さそうなの鳥海山・七高山はずっと楽しみだったのだが、前日にリーダーが4回目ワクチン接種で、リーダーの体調に何かあれば大きな山だけに不安があり、急きょ中止になったもの。この時期に七高山登山とは「すごい」と言われそうだが、それは名目だけ。「疲れたところで下山する」という暗黙のルールの鳥海山だ。山頂まで行けるとはつゆほども思っていない、「ナンチャッテ鳥海山」である。こうした精神的にプレッシャーのない、ほどほどの山歩きが、この年になると一番身の丈に合っている。もうピークハンターなんて言う言葉は過去のものだ。
 しかし前岳も近場とはいえ、アップダウン激しく、いいトレーニングコースだ。心してゆっくりと登り始めたのだが女人堂のはるか手前で足が動かなくなり、身体全体にだるさが充満、気力も萎えてしまった。途中で「毎日太平山」のO先生と会うが「アンバイ君は何年生まれ?」と訊かれたので「昭和24年です」と答えたら、「なんだ、まだ戦後生まれか」と笑われてしまった。「戦後生れ」で、「若い」と言われるのは珍しい。

毎日太平山のO先生

空き地があれば休みたくなった

 けっきょく女人堂までは2時間かかってたどり着いた。トレーニングのつもりで出かけた山だが、前岳山頂までも行けず、とんだ自信喪失につながってしまった。この穴を埋めるのはちょっと時間がかかるも。
 しかし女人堂まで2時間ってフツーじゃない。身体がかなりなまっている。無理に言い訳を考えれば「ワクチンのせい」にすることもできる。4回目の接種後、倦怠感や頭痛、ノドが渇く状況がしばらく続いていた。あの山歩きの疲労感はワクチンのせいで、自分の体力が衰えていたわけではない。と考えると少しは安心と納得が得られる。でもそうじゃないよな、たぶん。やはり山を登る身体はそれだけでは劣化していくばかりだ。基本的なストレッチや筋トレを怠れば、身体はどんどん楽な方向に勝手に舵を切ってしまう。暑さもあって筋トレもストレッチもサボってきたツケが、先日の前岳の無残な敗北だ。筋トレをまじめにやろうと心に決めたが、それをあざ笑うように仕事がバタバタと忙しくなった。人生はうまくいかない。

 温泉は「ザブーン」。あまりの疲労に長く浸かっていると貧血が起きそうなので、身体を洗って露天風呂に入って、すぐに帰ってきた。いやはやこの敗北感はいかんともしがたい。

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