No.269
なぜこの山に登る人はいないのか?
[八塩山・矢島町・713m・2022年5月22日]
 Sシェフと二人で八塩山矢島口からの山歩き。最初は5名ぐらいの予定だったがキャンセルが相次いだ。まあこんなこともある。いつもの弥次喜多道中になってしまった。Sシェフと2人だけの山行というのはこれまでもけっこう多い。
 今回からリュックをいつもの30リットルから、50リットルのほとんど使ってない大きなものに替えてみた。前回の男鹿三山縦走の際、若い新人女性にSシェフがリュックの中身を取り出して説明しているのを聞いて驚いた。用意周到な装備品が実にコンパクトに収納されているのをまじかにみて、猛省した。どんなに天気が良くても雨具や替えの下着、介護用のひもや各種ロープに救急用具などが、これ以上小さくならないほど計ビンに折りたたまれて40リットルのリュックに見事に収納されていた。その彼の半分ほどをまねても30リットルのリュックでは無理で、ワンランク上の50リットルリュックに登場してもらった次第である。
 登り始めると雨がポツポツきたが、ブナの若葉が雨を遮って濡れることはない。いつものようにフカフカの落ち葉の絨毯が山頂まで、約二時間半にわたって続いた。私見ながらここは「秋田で最も贅沢で歩きやすい登山道」だ。
 不思議なのは五年ほどのあいだに10回以上、この山に登っているのだが山中で登山者に出会ったことが一度もない。駐車場で他の登山者の車を見かけたこともない。昔は矢島と東由利を結ぶ「生活道」だったらしいが、いつのまにか廃道になり、2000年代になって国の補助金などで山道が整備された。登山道も登山標識も他の山とはくらべものにならないくらい立派だ。それなのに登山客は皆無なのだ。

伐採地と鳥海眺望

赤石観音には一升瓶が
 登山口には「林道荒倉線」という表示があるので、登山道というよりも杉を植林や運搬のための生活道路という意識のほうが地元の人には強いのかもしれない。さらに矢島の坂之下集落から国際禅堂までの道がちょっとわかりにくいのも原因かもしれない。国際禅堂から登山口までは2・4キロの山道を走らなければならないから、これがネックになっているのかもしれない。
 この山は登るというより、いわば峠越え、古道歩き、といったニュアンスが濃い。アップダウンを繰り返しながら4・5キロ近く歩きとおす。山頂には人がたくさんいた。前平コースから登ってきた人たちだ。ものの1時間で山頂までくることができるので、手ごろなハイキングコースとして人気なのだ。その前平コースで「クマがいた!」と興奮気味に話している人たちがいた。矢島コースでも登山道に明らかにクマのフンとわかるものが何カ所かで散見できた。行きも帰りもクマ防止用の笛を吹き続けて疲れてしまった。行きは2時間30分、帰りは2時間で登山口にもどってきた。

 温泉は「ゆりえもん」。窓が広くて明るい浴場だ。薄暗い温泉もそれなりの風情があるが、最近は外の光がたっぷり降り注ぐ明るい温泉のほうが好きになった。

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