No.134
ついに「幻の山」の山頂に立つ
[八塩山(713m・東由利町――2016年6月5日)]
 八塩山は大好きな山だ。5月中になんと3回もその八塩山に登っている。ひと月で同じ山に3度も登るのは生まれて初めてだが、これには「事情」がある。10年前、山登りをはじめた時、八塩山に矢島口から登り、初めて「山っていいなあ」と感動した。当時、国から環境整備事業のお金の補助があり、古道としてやぶの中に埋まってしまった矢島口登山口がきれいに整備された。そのニュースを聞き当時のリーダーのFさんが連れて行ってくれたのだ。そのときは行きに2時間半、下山にも2時間近くかかるように記憶している。ところがその後、いろんな人たちと登った八塩山は、すべて東由利側から1時間以内で山頂についてしまうダイジャスト・コースだった。この10年で登山客が少なく矢島口コースはガイドブックや地元の人からも忘れられていたようなのだ。そんなわけもあり、登山口の探索をかね5月は3度も近辺をウロロしたわけである。

 天候はいまいちだったが、予想通り若いブナの姿が流麗で、におい立つほど美しい森だった。アップダウンの多いコースだったが登山道はよく整備され危険な個所や歩きにくい場所はなかった。山に登るのは1か月ぶりだったが、疲れも吹き飛ぶほどの快適なコースで満足。10年前と同じく登りは2時間20分、下りは2時間。東由利側のルートの2倍の距離だが、その価値は十分にある登山道だった。

ブナの若木がきれい

霧に煙る山頂小屋
 実は1か月間山に登れなかったのは台湾旅行のためだ。この旅行中も最終日には我慢できなくなり山登りのまねごとをした。海外登山である。4泊5日の最終日、朝から故宮博物院へ行ったのだが、その周りの山々をみているうちムラムラと登りたくなった。博物院の周辺には300mほどの山々が連らなっている。道沿いにあった山道に分け入ると「マウンテン・トレイル」の表示があった。山中では原色の赤い花や真っ黒なトンボ、ゲホゲホとヘンな鳴き声の鳥たちが出迎えてくれた。30分ほど歩くと突然階段の登山道が消えやぶになった。これ以上は危険と判断して踵を返すと、足元にタヌキほどの黒い動物。心臓が飛び出るほど驚いた。野犬だった。少し前まで人間に飼われていたのだろう、人なつっこい。一緒に山を下りてからもずっとついてきた。ウサギほどもある大きなリスたちが木々の上でチョロチョロ、まるでからかうように動き回っていた。故宮博物院の周りの山は、また登る機会があるかもしれない。

 温泉は大内町の「ぽぽろっこ」。ここの露天風呂は何となく気に入っている。身体を洗ってすぐに露天風呂に移動、ここでゆっくり湯につかった。

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