中国江西省で1999年から3年余、さらに中国山東省青島で2007年から4年半の駐在員生活を体験、いつかシルクロードをバイクで走りたいと中国の運転免許を取得したダンナ(菅井普三)と、駐在先に押しかけてはバックシートに陣取って気ままに手綱をふるう主婦(菅井直子)の二人。中国の田舎を見て食べて走った日々を女性の視線で記録しようと、主婦の見たもの感じたものをダンナがまとめるという共同作業。その結果、著者名は菅井二人に。
No7
いつかシルクロードをバイクで走りたいと中国の運転免許を取得した駐在員のダンナ。駐在先に妻を呼んでは二人でバイクにまたがり風になる。その様はまさにフタコブラクダ。中国の田舎を見て食べて走った、普段着の中国の記録。



曲阜・泰山ツーリング4
2009年10月3日:臨沂市→曲阜市
予定走行距離188Km 、予定走行時間 5.7時間



 8時に出発したけれど、午後1時には町の入り口に「詩書之府」と書かれた大きな門に迎えられ、「曲阜(チーフ)」の町に着いた。実際距離も162Kmと地図で調べた距離より短い、新道を使ったせいかも知れない。ホテルを決めるのにやはりひと悶着あった。曲阜はさすがに観光地、新しくて立派なホテルがあちこちにある。けれど歴史の町、中華文明思想発祥の町の一つに来たのに、近代的高層ビルのホテルはしっくりこない。
結局「孔廟」のすぐ隣にある、由緒正しい「闕里(チエリ)賓館」にした。闕里とは孔子様が住んでいた地名とか。何より中国式建築の外観に目が眩んでしまった。1泊780元(10,140円)と言われて、尻込みするダンナに「私、一度は中国式のホテルに泊まりたかったのー」とゴロゴロ喉を鳴らし、フロント向いて「お願いだからもっと安くして!」と頼み込んだ。
 やっと予算の2倍600元にしてもらい泊まることになった。汚い格好とバイクで来たのを見て「あんたら場所間違えてない?」という顔をされたけれど、日本のパスポートを出したら、噴水のある中国式中庭が見える二階の部屋にしてくれた。中国でも日本の赤いパスポートは信用がある。
 曲阜市は人口30万人と書いてある「郷級市」、30万人といえば日本では大きな市になるけれど、市街はひいき目で見ても7万人くらいにしか見えない。ほとんどが孔子様に関係した観光の町らしい。このホテルの立地は抜群で、隣が「孔廟」、裏が「孔府」、その先が「孔林」で、この3箇所をあわせて、1994年に世界文化遺産に登録されている。
 荷物を置くなりさっそく孔家歴代の墓がある「孔林」に歩いてゆく。両側にお土産物や、食べ物を売る店が並ぶ中、直線の長い参道が続く。周りを見ると観光客の中に、串にさした緑色のものをかじりながら歩いている人がいる。「あれは生ダイコンだよ、皮だけじゃなく中まで緑色で、さっぱりして美味しいんだ」とダンナは言う。よく見ると長さ7cmくらい、皮も剥かず輪切りにして切り目を入れただけを串に刺している。「いまはダイコン、茹でトウモロコシだけど、夏はキュウリをかじりながら歩いている人もいる。それと果物ならパイナップルの串刺しが人気」。
 見ていると美味しそうだけれど、日本人には生野菜や、果物でも包丁が入ったものを観光地で食べるのはお奨めできない。どんな水で洗っているかわからない。日本人はきれいな水と、清潔なものばかり食べているから、雑菌に対する抵抗力が弱い。せっかく美味しいものを食べに中国に来ているのに、お腹をこわしたら口惜しいもの。
 巨大な城門を抜けると、宋代、元代に植えられたという柏、松の巨木が両側にそびえる「孔林神道」という道が続く。広大な敷地に孔子直系の子孫、およびその家族の専用墓地が広がり、十数万余のお墓がある。孔子様は紀元前552年生まれだから、2500年以上これだけの墓地が守られてきたというのも、立派を通り越して恐ろしい。
 大勢の観光客と一緒に、まずは孔子様のお墓にお参りする。その後、左に行けば明代墓群、右に行けば清代墓群とか書いてある。この広さ、どこを見ようかと思っていたら、ダンナがお腹の調子が悪いからホテルに戻ろうという。それならと出口に戻り、三輪自転車タクシーに乗った。この運転手は他の人が城門の外で客引きしているのに、中まで入って私をつかまえた。ホテルに着いたら、10元の請求に20元札しかなく、お釣りをもらおうと、20元を渡したら「謝謝!」とニコニコ顔でサッとしまい込んだ。ダンナが「え!あのー!」とトロトロしているうちに行ってしまった。二人の顔を見比べて、あっちはきっと家が建つだろうと感心する。
 シャワーを浴びて復活すると「孔府」へ。ここは孔子直系子孫の住居で、主に明、清時代に建造されたもの。皇帝からのお使いとか偉い人を迎える建物、お付の人が控える部屋、謁見する堂など、案内書によると463の楼、庁、堂があるという。確かに本物の風格もあるし、磨り減った敷石も年代を感じさせる。ただ…ゴチャゴチャ多過ぎて、皆同じに見えてしまう。
 夕方からはそれほど大きくもない土産物街をブラブラした。1、2軒のぞいている内に暗くなり、潮が引くみたいに観光客がいなくなってしまう。それと一緒に客待ちの観光用三輪自転車、飾り馬車、電動自動車も消える。賑やかだっただけに急に寂しくなる。大きな城門をライトアップしているのも空しい。やはりここは孔子様の教えがゆきわたり、礼儀正しく品行方正で、夜遊びなんてしてはいけないのかも知れない。
 これは食べるしかないと、韓国料理と書いてある店に入った。ところが入口は分かれているのに、郷土料理の店と中が繋がっていてメニューが両方ある。頼んだものがとても韓国料理とは思えない味付け。豆腐料理は隣のテーブルが頼んだ郷土料理とほとんど同じなのに、別の名前で出てくる。韓国冷麺なんかまずくて胸が悪くなりそう、それでも値段だけは観光地らしく立派なもの。2日目の夕食は大ハズレ! でした。

闕里賓館と孔子様の絵
 記 録 :2009年10月3日
 走行距離 162Km 、走行時間 4時間、平均時速 41Km/h、延べ 374Km
  ( 計画 : 走行距離 188Km 、走行時間 5.7時間、平均時速 33Km/h )
ガソリン給油:1回 17元( 221円)、闕里賓館:600元(7,800円)
曲阜市観光地図:5元(65円)
昼食:2皿と餃子1皿 50元(650円)、夕食:韓国料理?103元(1,339円)
孔林入場料:40元×2人(1,040円)、孔府入場料:60元×2人(1,560円)
タクシー:20元(260円)、のど飴:5元(65円)



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