2025/07/17
コメどころ東北の出版社主によれば、日本のコメ騒動とはほとんど無縁で、だれもほとんど関心を持っていない。農家しかり、消費者もです。県民の半分以上が、「米は買うものでなくもらうもの」というのが常識で、どこかしらに農家の知り合いがいるためです。コメ農家は兼業なので、高くなろうが安かろうが、あまり関係ない、ことなのだそうです。関係あるのは農協と政治家で、こちらは政治問題化に必死という状況です。ですから、今回のコメ騒動は「産地側からの視点」が決定的に欠けていて、ちょっと「喜劇」です。産地ではない「都市住民」の間のことのようです。
一方、西の米産地の元農家の方からは、他の人に田んぼを貸して、米を作ってもらっていたが、「いくらかお金を出して欲しい、作るにも経費がかかるから…」と言われ腹がたったといいます。別の人に稲作をお願いした時には、30キロ入りを2袋買うという約束をしないと作ってもらえなかったそうです。数年前の話ですが、30キロ5,000円とか6,000円で作ってもらっていたとのことです。ここも作るのは止めてしまったので、今は、生協から買っているとのことです。他の作ってもらっている方は、昨年は30キロ、8,000円、今年は10,000円を上回ることを覚悟しているとか。また今年の話のようですが、知り合いから30キロ8,000円で購入してそれを12,000円(1.5倍)で転売した者がいて、それが皆知り合い同士でえらい騒ぎになったとか。参議院選挙が今週末ですが、そこの選挙民である方は、「政治家なんてこんなことは日々の雑事程度のことなのでしょうが、実はこうしたことの積み重ねが、この国の抱えるいろんな課題の最大の原因なんだと気づいて欲しい」ものだと指摘します。
●朝日新聞社と毎日新聞社は8月から土曜の夕刊発行を取り止めると発表しました。新聞販売店の労働環境維持や改善を計るためというのが理由のようですが、部数減も大きな要因だと推察します。地方紙では夕刊発行はされなくなってきていますので、後に続く動きもありそうです。ただ、わが国の夕刊発行は、同じ新聞社が朝夕刊を連続発行するという点で世界的に見てもめずらしいとのことです。そもそも朝刊と夕刊に求められる記事内容は異なり、「朝刊は朝起きて頭が冷静な時に読む新聞で」、夕刊は「疲れきって帰ってきて、一杯のコーヒーや一服の煙草のように気軽に読める材料によって編集されるべき新聞」といわれます。24時間眠らない社会になり、メディアフォーマットが進化している昨今、夕刊が必要か?ということも言えまが、本の紹介は夕刊でされることも多く、紹介する媒体が減ることは淋しいことです。
●映画バカのお話し。門脇繁著「シカバン 札幌<映画>生活史」2,200円 寿郎社は、札幌で、中3時代(1975年)から50年間、映画館や試写会場へ足繁く通い、封切り映画のペストテンをノートし続けた映画狂歯科医の半生記。あの時代のあの映画を思い出し、誰かに「マイベスト映画(ワースト映画)」を語らずにはおれなくなる。ISBN978-4-909281-70-8
●<地方の女性流出>が取り沙汰されているけど、当の女性たちの姿はあまり見えない。地方都市のひとつ富山で、女性たち14人の語りを聞き取り、「数」から「生身のある人間」へ解像度あげて、何を選んで生きてきたのか、選べなかったのか、選ばされていたのか、を探り、同郷で富山から出ていった上野と山内が対談します。上野千鶴子*山内マリコ共著「地方女史たちの選択」1,800円 桂書房は、7月上旬刊。ISBN978-4-86627-165-1
●魚類研究者が八重山の海で出会ったクロマグロの秘密。クロマグロの生態・生活史、回遊と産卵、セリ値に影響する要因を漁業関係者と調べた研究などを語ります。下瀬環著「沖縄まぐろ図鑑」2,200円 沖縄タイムス社は、ベストセラー「沖縄さかな図鑑」の著者がまぐろ県沖縄から届けます。ISBN978-4-87127-321-3
●首里城の「浮道」(ウキミチ)はなぜ正殿に対して直角ではなく少し斜めになってるのか?方位はどう決められたのか。南ふう著「首里城の二つの軸−方位の謎をめぐる旅」1,800円 ボーダーインクは、素人の著者が、首里城の方位の謎に迫ったノンフィンション。ISBN978-4-89982-488-6
●きれいな海の写真がふんだんに撮られた房総を拠点にした基地式捕鯨の映像記録。西野嘉憲著「鯨と生きる 北海道編」3,000円 立夏書房は、DVD付きフォトブック。北海道根室から青森渡島半島恵山沖へ、そして松前沖へ。探鯨追尾、てっぽう、槌鯨、解剖編。ISBN978-4-9913387-2-4
●<アラブ小説国際賞受賞>の水をめぐる傑作長編小説。ザフラ−ン・アルカースィミー著山本薫 マイサラ・アフィーフィー訳「水脈を聴く男」2,000円 書肆侃侃房は、水の少ない小国オーマンが舞台。井戸で発見された溺死体のお腹から取り出された胎児。彼には大地の「水脈を聴く」能力が宿っていた。ISBN978-4-86385-674-5
●北アルプスや東北の山々とは異なる栃木の山の様相の素晴らしさ。山岳信仰、山仕事など独特の山の文化を余すところなく。柏村祐司著「栃木県山岳誌−山の信仰と山民の暮らしをとく」2,000円 随想舎は、著者自らが登った栃木全域の山々の山容、地勢から歴史、民俗まで、軽快な筆致で40座を写真やコラム多数で収録。ISBN978-4-88748-439-9
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