TVドラマのタイトル『サヨナラ、きりたんぽ』が、地元のイメージを損ねるとして秋田県がテレビ朝日に抗議、タイトルが変更になった。秋元康やAKB48が関わるドラマで、きりたんぽを男性自身のイメージに重ねている。結果的には秋田県民は溜飲を下げ、テレビ局は視聴者やスポンサーにおもねった形で一件落着した。個人的にモヤモヤ感と後味の悪さが残った。日ごろ「表現の自由」を標榜するマス・メディアがこうも簡単に番組名変更に応じたのはなぜなのか。ジャーナリズムの権利の放棄ではないのか。いっぽう秋田県は憲法で保障されている「表現の自由」への介入を躊躇する気持ちはなかったのか。なかったとすれば地方自治の傲慢ではないのか。そうした視点からの反論や異論がほとんどなかった。釈然としない気持ちが今もくすぶったままだ。
 コインランドリーで登山靴を洗った、とブログに書いたら、匿名の痛烈で執拗なバッシングにあった。「衣類を洗う洗濯機で靴を洗うなんて」というもっともな意見だ。「自己中の団塊世代はこれだから困る」と世代批判にまで火種はおよび、いやはやなんとも私は「田舎者のバカオヤジ」扱いである。どうやらこの批判者たちは、コインランドリーに「靴専用洗濯機」が常備されていることを知らないようだ。コインランドリーには衣類だけでなく靴洗濯機も付いている。子供用ズック靴を洗う主婦がいるから需要が多いのだ。巨大な洗濯機群の隅っこに小さなフツーの大きさの洗濯機が置かれている。それが靴専用機だ。暇があったら覗いてみてください、と田舎のバカオヤジは弱々しくつぶやくしかない。
 朝日新聞県版に連載しているコラムに、太平山中岳の遭難事故について書いた。私自身その遭難の1週間前、同じ山に登っている。あんな狭いエリアで遺体が2か月間も発見されないことにミステリアスなものを感じた。書くにあたっては太平山の主(ぬし)と言われるOさんに取材、了解も得て掲載した。そのコラムに対して、新聞読者から「遺族への配慮がない」というクレームが新聞社に入った、という。遭難死した方のプライバシーや個人攻撃などには一言も触れていない。事故の経過とOさんの見解を述べただけだ。私たちの身近な場(山)で起きた遭難死という社会的事件について、検証が必要だという趣旨のコラムなのに、「遺族をおもんばかって触れるべきでない」という抗議がくる時代なのだ。共謀罪も怖いが、こんな小さな自主規制の強要も十分怖い。

2月×日 指にツバをつけなければ新聞紙がめくれない。脂ッケが抜けて、「事務用海綿」が手放せなくなった。
2月×日 散歩の途中、派手に転んだ。前のめりでコンクリートにダイビング。手のひらやひじ、左肩強打。家の中ではカミさんが風邪でゲホゲホ、ウイルス蔓延中。
2月×日 朝起きると筋肉痛。路上転倒の影響か。風邪はまだ大丈夫だが、市販の風邪薬を服み、生姜湯で身体を温め、室内でマフラーを巻いて仕事。
2月×日 県南の蔵元「天の戸」にお邪魔。おいしい杜氏料理やおしゃべりを楽しんで、久しぶりにリフレッシュ。
3月×日 宅配業が大変なようだ。ドライバー不足で、15年前、足を洗ったはずのDさんが突然集荷に現れた。週末のみのお手伝いだそうだ。
3月×日 風邪の一歩手前で攻防戦。いまだ侵入を許していない。今日は1冊新刊、明日は3冊の新刊が出来てくる。こんな時に風邪なんか引いていられない。それにしても新刊ラッシュは当分止まりそうにない。1年分の本がこの2か月間に集中してしまった。なぜなのか、理由はわからない。
3月×日 県南地区の「雪よせ世界大会」というイベントへ。「雪よせはスポーツだ」という発想がおもしろい。午後からは町内会の新班長顔合わせ。今年は町内会の役員(副会長)兼班長をやることになった。
3月×日 山にも酒場にもご無沙汰だ。夜はもっぱら録画した映画やTV番組。TVで面白いのはNHKの「グレートレース」。砂漠やアルプスの山中、熱帯のジャングルを何日もかけて走り回るやつだ。やっぱりスポーツはアウトドアが好き。
3月×日 昼はずっとリンゴと寒天のランチだが、真冬のリンゴはどうなの? とよく訊かれる。これがうまいのだ。「サンふじ」という秋田産の品種で、値段は1個100円。スーパーでかんたんに買える。
3月×日 近所に二ッ森という300メートルほどの山がある。やぶがひどくて登山道はない。でも雪山なら歩ける。Sシェフも一緒の挑戦だが、下山で一本、沢を間違え遭難騒ぎ。1時間たっぷり雪と格闘してどうにか脱出。冬山はやっぱり怖い。
3月×日 忙しさの山はこえた。第2波は今月下旬にくる。第3波は4月中旬か。これで1年分の仕事のあらかたの片が付いた感じ、かな。
3月×日 Sシェフ恒例の料理教室。今日のテーマは「ビンツマ」。食材を調理し保存用に瓶詰にしたもの。これで一献やろうという趣旨。小生も「缶つま」で対抗。「イカダイコン」に「焼き鳥チヂミ」「コンビーフの玉ねぎ炒め」をつくる。
3月×日 ビールは苦手だったのだが、キリンの「クラッシック・ラガー」を飲み始めたら複雑な滋味があり飲めるようになった。生ビールではなく熱処理した、日本では珍しいビールだ。
3月×日 図書館で江戸末期に北東北を旅した江戸の落語家の紀行本を探していたのだが、書名が思い出せない。「江戸」「紀行文」「落語家」「秋田」と検索をかけてもダメ。
3月×日 朝5時起きで酒田行き。友人のSカメラマンと八幡地区にある「かくれ山」をスノーハイキング。夜はホテルバイキングで宴会。
3月×日 よく行く湯沢市の喫茶店主に「禁煙法案が通れば店をやめる」と告白された。愛煙家にはショックな法案のようだ。家に帰ると大学前飲食店で死傷者を出す火事。店主は20代のころから一緒にバカをやった友人。
4月×日 先週に続いて今日も山形・鶴岡市の高館山。パートナーも同じカメラマンのS氏。オウレン、ヒメアオキ、マンサク、カタクリ、イチリンソウ、イワウチワにショウジョウバカマ、ツバキ、キブシなど、いち早く春の花木が今を盛りと咲き誇っていた。
4月×日 今月は4本の新刊。町内会の役員会。今週から山仲間からは「プロセッサー」とバカにされる仙台の私立大学で「出稼ぎ」講義もはじまる。
4月×日 午後から時間が空いたので「餃子」をつくる。先日Sシェフに教えてもらった。大量に作って冷凍して好きな時に食べることができるのがいい。出来はまあまあ。
4月×日 少しずつ体重が落ちている。ダイエットしているわけではない。外食が減り、酒量もコップ一杯程度、それがいいのだろうか。
4月×日 『沖縄うりずんの雨』というドキュメンタリー映画がおもしろかった。沖縄の差別の歴史をアメリカ側の映像資料や地元民の証言などで構成したもの。製作はシグロの山上徹二郎。懐かしい名前だ。音楽も素晴らしかった。小室等と谷川賢作だ。
4月×日 3週連続で週末の酒田行き。庄内の人たちが「庄内アルプス山脈」と呼ぶ日本海沿いに隆起した荒倉山へ。標高は305m。
4月×日 忙しいと企画が湧きだしてくる。忙しい時に限って面白いアイデアや新鮮な企画が閃く。4本ぐらいの企画を思いつき、一人ニヤついている。
4月×日 すさまじい風。2階の仕事場から見える電線が縄跳びのように上下に揺れ動いている。吠えるような風音で何度か夜に目覚めた。
4月×日 県立博物館で打ち合わせ。驚いたのは学生時代の先輩のM学芸員が嘱託でまだ働いていたこと。若い学芸員に言わせるとM先輩は「博物館の主」なのだそうだ。
4月×日 このところルーチンになっている古本屋巡り。奇書珍書を探しているわけではない。在庫のなくなった自舎刊行物を買いあさっているのだから、心境はいささか複雑だ。
4月×日 朝からカミさんのアッシーでバタバタ。朗読会の本番が近いのでテキも何かと慌ただしいようだ。
4月×日 もう5年以上、「タケダ漢方便秘薬」を毎日のように服んでいる。2日前、思うところがありやめた。「一生薬を服み続けるのは嫌だなあ」と突然思ったからだ。
4月×日 東京へ。東京は青空で暑いほど。人やビルがあふれ、まるで別世界に迷い込んだ気分。年々、東京が嫌いになっていく。
4月×日 義母の一周忌。腰痛がひどくてじっと座っていられない。腰痛持ちではないので、原因は過労のようだ。これは間違いない。
4月×日 事務所の階段に手摺りが完成。腰痛のために設置したわけではない。シャチョー室宴会の折、酔った仲間が派手に転げ落ちたためだ。
5月×日 このところ面白い本とであわない。それでも見栄で『サピエンス全史』、苦行だったが下巻半分まで読了。文庫本が出た『火花』も読む。
5月×日 GW読書用にあつらえた本がようやく届いた。堀川恵子『永山則夫』、桐野夏生『夜の谷を行く』、多和田葉子『百年の散歩』……あれッ、3冊とも女性が著者だ。
5月×日 GWはいつもの通り机の前に垂れ込めて、じっと動かない。
5月4日 ケムシカジカという魚を食べた。秋田では「すごえもん」という名前を持っている。ほとんど鱈のようだが、ほんのりフグを感じさせる弾力も舌に残り、美味。
5月×日 GW中恒例の鳥海山祓川登山。残雪期の雪のしまった今しか登れない。去年は九合目手前で強風のためリタイア。これまでの戦績も4勝4敗。八合目・七ツ釜避難小屋で体力が続かないことがわかり一人下山。悔しい、悲しい、もどかしい。
5月×日 時代小説の登場人物が「情報」とか「報告」とか「連絡」といった言葉を使うので、いやになって読むのをやめた、とある人が書いていた。いま読んでいる秋田の菅江真澄について書かれた本にも「佐竹藩」と「みちのく」が何度も出てくる。真澄が旅した秋田は「羽州」や「出羽」であって「みちのく」ではない。「陸奥」とは「常陸の奥」という意味。佐竹藩も歴史用語としてはペケ。他山の石以て玉を攻むべし。
5月×日 朝ごはんの茶碗は武田浪さんという滋賀の陶芸家からいただいたもの。お気に入りの焼き物だ。その武田さんが沖縄の個展会場で倒れ亡くなったとの報。言葉を失う。合掌。
5月×日 身体が重い。便秘薬をやめたのが原因だ。ちょっとした段差に躓くのも体重のせいに違いない。毎朝体重計に乗るのが辛い。
5月×日 面白い本が続いている。広瀬和雄『前方後円墳国家』。弥生時代がこんなに面白い時代だったとは目から鱗。羽田圭介『成功者K』、藤脇邦夫『断裁処分』、桐野夏生『夜の谷を行く』、高橋順子『夫・車谷長吉』とハズレなし。
5月×日 シェリー酒(ティオペペ)を1杯。このスペインの銘酒もスーパーで2千円以下。それでハズミがつきバランタイン17年をストレートで2杯、3杯。ツマミはカカオ90%のチョコ。そのチョコよりウィスキーのほうが甘いのだから驚く。
5月×日 田植えの時期が遅くなっている。昔はGW中が田植え最盛期。10年前まで事務所の前には広大な田んぼがあった。暮らしのリズムも田んぼの景色をアクセントに営まれていた。
5月×日 太平山奥岳。快晴で無風。ブヨのような虫に苦しみながらも3時間半の苦闘で山頂に立つことができた。少し自信が蘇ってきたゾ。
5月×日 近所にオープンしたレストランでカミさんと食事。「Jかずゆき」という創作料理の店だが、ここ数年の食べたものの中でトップスリーに入る美味しさ。驚いたなあ。
5月×日 珍しい来客。33年前、ひとり旅でペルーのマチュピチュに行った。そのとき私のガイドをしたというM君だ。申し訳ないが全く記憶にない。M君は人類発祥の旅路を人力でトレースした関野吉晴の「グレートジャーニー」の撮影スタッフとして長く関わり、その後も定職につかず定住もせず、今も世界を放浪しているという。


*今回も新刊がメイン、目録も新しくなりました。チラシの中でまだ発売されていないのは『角館城下町の歴史』(7月初旬刊)のみです。もちろん予約注文は可能です。 (あ)