原節子が亡くなった。小津映画を繰り返し観ているので、当方には「昔の女優」というイメージがない。追悼の意も込めて原節子主演『麦秋』(昭和26年制作)を観なおした。この作品には、原が秋田弁で友人と会話する印象的なシーンがある。その流ちょうな秋田弁に驚き、以来すっかりファンになった。『麦秋』は原節子の作品の中でも喜怒哀楽のはっきりした、セリフや感情表現の多い役回りだ。原(役名・紀子)の夫は秋田の県立病院内科部長として秋田に赴任し、「ツツガムシの研究」をしたいという医師だ。そのため原は秋田弁を練習し、友人の淡島千景とおふざけで方言で会話をする。このシーンはわずか30秒ほどだった。昔観た時、ひいきめだったのか、延々と秋田弁の会話が続いたように記憶していた。思い込みというのは恐ろしい。
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8月×日 「おいしいものは脂肪と糖でできている」というのは平凡だが、ダイエッターには深くて、秀逸なテレビCMコピーだと思う。 8月×日 毎月の請求書類をチェックしていて異常に気が付いた。コピー料金がバカ高い。原因はプリンターの印刷モードがすべてカラー仕様になっていたため。あわてて「モノクロ専用」仕様に切り替えた。 8月×日 ビン・カン回収日。月に2〜3回しかないから、忘れると大変だ。 8月×日 仕事が立て込みイライラ。掛け持ちでいろんなことを同時進行でやれる人がうらやましい。「不器用」なのだ。「不器用」をアメリカ人は「歩きながらガムを噛めない」と表現する。元大統領フォードを揶揄した言葉なのだそうだ。 9月×日 「山行(さんこう」をずっと「さんぎょう」と読んでいた。恥ずかしい。アルバイトに来ている秋大生M君が地元新聞社に就職内定。おめでとう。 去年のバイト君たちもABS秋田放送と朝日新聞に就職。みんな優秀だ。 9月×日 『別離』というイラン映画を観た。社会のシステムはほぼ日本の昭和30年代。介護の女性ヘルパーは戒律的に老人の肌に触れられない、というのだからあきれるやら驚くやら。 9月×日 能代市での出張仕事が続いているが、楽しみは「ラーメン十八番」。半世紀近く能代市民に愛され続けているラーメン屋で、これがうまい。 9月×日 トラブルがあり、楽しみにしていた台湾行きが中止に。関西の友人たちとのグルメ旅行だ。自分のミスで、すっかり落ち込んでしまう。 9月×日 9月10月は本が売れる時期。そこにうまく新刊ラッシュが重なってくれた。今月末だけでも2冊の新刊、4冊の編集準備中の本。 9月×日 大雨が過ぎ去ったと思ったら「いきなり秋」。9月中旬だが長袖で仕事。でもようやく夏掛け布団は卒業し、夕飯はサンマだった。 9月×日 10年ほど前に出した『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』という本が突然売れ出した。『ひとり出版社という働き方』という本が話題になっていて、その影響のようだ。ネット世界では何が起きるかわからない。 9月×日 ふだんあまり相撲は観ない。今場所は秋田県出身力士・豪風の成績が気になる。来月初めに豪風と能代市長の「対談」をセットしているためだ。勝ち越してもらい機嫌よく対談収録をしたいもの。 9月×日 内館牧子『終わった人』(講談社)は面白い本だった。この本は間違いなく映画化かテレビドラマ化されるだろうな。作家の想像力に脱帽。 10月×日 東京出張。メール送信がうまくいかない。夜、乃木坂・東京ミッドナイトタウンのホテル45階で「京懐石とウイスキー」という食イベント。相席したのがウイスキーの神様・輿水精一さんでメチャクチャ緊張する。翌日、ホテルですごいカメムシ臭。着替えのパンツの中にカメムシがいた。自宅の洗濯干し場で付いたカメ公を東京まで持ち込んでしまった! 10月×日 巨人軍野球とばく事件が報じられた時、すぐに犯人は「笠原投手」と直感した。以前、元プロ野球選手である父親をTVが映し出した時、その風貌やいで立ちが「その筋の人」だった。それが脳裏に焼き付いていたせいかも。 10月×日 「天の戸」の杜氏Mさんから自家製「あきたこまち」が送られてきた。市内の料理屋「お多福」のきりたんぽも届く。秋の本格的到来だ。 10月×日 週日だが休暇を取り栗駒縦走「紅葉」登山。山の紅葉は終盤デス。 10月×日 66歳の誕生日だが誰も祝ってくれない。のみならず朝一番で足裏にできた「魚の目」除去のため皮膚科へ。医師は笑顔も見せず「こりゃタコだ」と削って診察は5秒で終わり。 10月×日 集中豪雨。音だけでも怖いと思うほどのすさまじさ。昨夜で仕事はあらかた終了。雨の中を歩き回るのは嫌いではないが、この雨力(造語です)では傘が壊れそうだ。 10月×日 ヒマなので仙台へ。用事もないのだが、行き帰りの電車で吉野弘『詩の一歩手前で』、村上春樹『職業としての小説家』読了。登山専門店で登山靴を購入。文具屋をはしごして来年のカレンダーや手帳購入、本屋も3軒ハシゴ、駅前居酒屋で焼き鳥とバーニャカウダ(蒸し野菜)、夜11時帰宅。いい休日になった。 10月×日 『女川ポスター展』は題名通り宮城県・女川商店街のポスターを並べただけの本。仙台の広告クリエーター87名が女川町内の42の店舗のポスター200種類を、ボランティアで制作した作品集。焼鳥屋のオヤジが「ツイッター? やってないけど、つぶ焼くよ。」とつぶ焼きの串を持った写真や中華料理屋のお兄さんの「味に自信。オレ独身。」といったダジャレコピーが延々と続く。モデルはすべて女川の商店主自身。震災本としてはピカイチのおすすめ本です。10月×日 日曜山行は八幡平・焼山。雲一つない晴天。風もなく暑い。強酸性の玉川温泉は身体に染みて、苦手だ。 10月×日 山の次の日は身体に残る疲労感と充足感で贅沢な気分になる。さらに願わくば、金の心配がいらぬほど本が売れ、いたずらで買った宝くじが当たり、暴飲暴食しても体重増えず、散歩をすれば大金が落ちていて……。 10月×日 月末だがモモヒキーズの恒例の新蕎麦会。前日に健康診断。明日からは種苗交換会(鹿角市)。日曜日(11月1日)は読書の秋にちなんだいろんなイベントが目白押し。忙しい。 10月×日 散歩をしていると、ちょっとした段差につまずく。間違いなく年寄りになった。くやしい。 10月×日 鹿角市で開催される種苗交換会へ。種苗交換会が大好きだ。野菜のことをいっぱい勉強したい。 11月×日 夜、DVDを見ながらウイスキーのストレートを呑む癖がついてしまった。少量でもウイスキーの酔いは強烈。まずいなあ、このクセ。 11月×日 冬用寝具に替えたのに肩のあたりがスース―。上半身の冷えで寝付けなくなってしまった。 11月×日 体調が思わしくない。風邪のひき始めのようなけだるさ。昨日、寝冷えの原因と思われる布団の下敷きマットを買ってきた。さらに「羽毛布団の団の下に毛布を敷くのはダメ」と店員さんに言われ、今夜から実践。 11月×日 関西経由で横浜、東京と3泊4日の出張。朝から新幹線を乗り継いで京都着午後4時。夜は友人たちとイタリアンで白トリュフを堪能。翌朝、琵琶湖周辺を電車で。近江舞子という町に降り武田浪さんという陶芸家と会い、彼に町を案内してもらう。少し動くと汗が出るが、その汗がトリュフ臭い。3日目は横浜に移動。図書館総合展分会のシンポジュームに参加。「本の学校」のNさんと久しぶりにお会いする。 11月×日 誰がどう考えても登山には適さない豪雨。なのに合羽着用で黒森山頂へ。何が悲しくてと笑われそうだが、今日は年1回の「なべっこ登山」。さらに「リンゴ狩り」の日。山より団子。 11月×日 森功の新刊『日本を壊す政商』。人材派遣の雄「パソナ」の南部靖之の実像に迫ったノンフィクション。いま一つ焦点がぼやけている。佐野眞一ならどんな風に書いただろうか。 11月×日 カミさんが膝の人工関節の手術を受けるため入院。病院も様変わりで看護師も親切。果物やナイフの類は持ち込めない。昔のような6人部屋はなく、4人部屋で食事にも選択肢がある。夕食も6時から。 11月×日 静かな日々が続く。パリの銃声もここまでは届いてこない。現在進行中の4冊の本の編集をゆっくりと穏やかに進めるのが毎日の仕事。家事も朝ごはんの準備から洗濯、掃除、買い物、夕食まで、新入社員と2人、順調にこなしている。掃除が苦手だ。 11月×日 遊学舎でモモヒキーズの第2回料理教室。小生は「食べる専門」で出場。年金男たちは真剣だ。 11月×日 1週間で一番気ぜわしいのが土曜日。原稿を書いたりHP更新などを、この日にまとめてやる。 11月×日 二ツ井にある房住山を縦走。下山の登山道を間違え遭難騒ぎに。危機一髪だった。山は油断ならない。慢心を心から反省する。 11月×日 ここ2,3年、肩と首筋にモーレツな痛みあり。年のせいにしていたが、すっかり治った。布団を替えたのが正解だったようだ。 11月×日 山形との県境付近にある三崎山(161m)に寺田寅彦が昭和3年に建てた「経緯度観測点」を探しに行く。やぶの中で訪れる人とていない場所。20世紀初頭、A・ウェグナーによって発表された「大陸移動説」を日本でも実証しようと寺田が作った測量台座で、運よく見つけることができた。 11月×日 村上春樹が福島の文学イベントにサプライズ参加したことを 各紙が報じていた。福島にフラリとでかけてそれが「ニュース」になるのは、この作家ぐらいだろう。いいニュースだと思う。 12月×日 夜、市内の高級いなにわうどん屋さんで高校生の一団が食事中。一人大柄な黒人系の少年がいた。2日後、「楽天」の入団記者会見にその少年がいた。オコエ瑠偉だった。同級生たちと東北旅行をしていたのだろうか。 12月×日 尊敬する編集者の宮下和夫さんの本が出た。吉本隆明に伴走し彼の本を出し続けた「伝説の出版人」だ。書名は『弓立社という出版思想』(論創社)。宮下さんとは馬が合い、いろんなところに連れて行ってもらい、著名人を紹介していただいた。インタビュアー小田光雄さんの才能にも脱帽。 |
*9月10月11月と本の注文は下降線。これは一過性の出来事ではなく、慢性化するのかも。そうした危機感はいつも忘れずに持っている。それにしてもヒドイ状況だ。
*一人の人間では抗えない「大きな時代の流れ」が存在する。理想や理念や根性や気合ではいかんともしがたい、アマゾンの大河のような、静かでゆっくりした流れだ。(あ) |