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秋田には年1回開催される「種苗交換会」という農業者のお祭りがある。100年以上続いているその種苗交換会とそっくりの祭りがアメリカにもある、と友人が教えてくれた。「ステーツ・フェアー」といわれる祭典で、名前そのままのミュージカル映画もあるそうだ。早速レンタルして観たのだが、1945年(昭和20)制作で、なんとオールカラー映画。キャンピングカーで祭りに参加する農民が主人公である。夜のダンスパーティで踊る農民のファッションはスーツもドレスも今とほとんどそん色ない。昭和20年といえば敗戦の年。こんな国と日本は戦争をしていたのか。 このごろ日本人はまた戦争をするのではないか、と思うことがある。「3・11」後のメディアの過熱気味の報道を目の当たりにしたためだ。「震災」や「被災地」といった言葉を、「戦争」という言葉と「置きかえ」てみたら、急に寒々しい気分になった。パニックを起こしているのは被災地や東北の人々ではなく、メディアではないのか。震災で日本人の価値観が変わった、というのは本当かもしれない。が、この世の終わりのように大騒ぎをすることには、強い違和感がある。 批判を許さない議論、議論の余地のない「正しさ」は、うたがうべきだ。 |
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×月×日 5日間の夏休みをとり信州の白馬村に滞在、周辺の山々をトレッキングしてきた。 ×月×日 遅まきながら被災地を訪ねてきた。といっても釜石と宮古の町を通り過ぎただけだが、驚いたのは中心部の信号がまだついていないことだ。この事実にまずショックを受けた。 ×月×日 8月9月10月と3か月連続で3本以上新刊の出る月が続く。でも忙しさのピークは過ぎた。いまのところ頭は真っ白。 ×月×日 朝早くから事務所が騒がしい。今日から3日間、倉庫の引っ越し作業でアルバイトの中高年女性たちだ。彼女らは何かあると手伝いに来てくれる常連ベテランアルバイターだ。 ×月×日 同業者が書いた『紙と共に去りぬ』という本があった。震災以後、パタリと電子書籍云々の議論が消えた。「紙の本」と「電子出版」の間には黒電話とスマートフォン以上の差がある。電子本には、これまでになかった新しいスキルと知性を持つ「別物の編集者(出版者)」が必要だ。その能力のない私は、どう考えても紙(活字)と共に去るしかない。 ×月×日 長生きはするものだ。昨夜「わさび飯」なるものを初めて食べた。アツッアツのご飯に1センチほどの厚さで粗くすりおろした馬わさび(ホースラディッシュ)を敷き、その上に海苔をたっぷりのせる。あとはお醤油を回してアフアフと掻きこむだけ。うまい。 ×月×日 朝から雨。これで3日連続だ。よく供給源が切れないものだ。それにしても寒い。ついこの間まで冷房だったのに今日はストーブ。初ストーブだ。 ×月×日 本を出すのが仕事なので秋は稼ぎ時。「稼ぐ」という言葉は品がないが本が1年で最も売れるシーズンだ。 ×月×日 ホテルの高層の窓から海が見える。横浜に出張中だ。海に抱かれて眠り、目覚めると眼下に海が広がっているという光景は新鮮。今日は仙台に移動、大事な打ち合わせが2つ。仙台では、河北新報社の夕刊コラムを本にする打ち合わせ。初めて「震災本」を造ることになり少し緊張する。 ×月×日 最低でも1か月前に新聞広告の出稿日は決まる。だから掲載日に本ができていない、というケースが結構多い。今月末は地元紙の一面と朝日、読売の全国紙に広告を出す予定だが、その新刊三本のうち二本は未刊になりそう。 ×月×日 人に訊くのがちょっと恥ずかしい「疑問」は誰にでもある。昔の庶民の着物というのはどうして紺色ばかりなの? というのもその一つ。昨日読んでいた宮本常一の本に答えが書いてあった。藩命で百姓には厳しい「禁色」の令が出ていたこと。貴重だった山藍に代わって江戸時代に「だて藍」が渡ってきて藍が簡単に栽培できるようになり庶民の着るものはみな藍色になった……なるほどそうだったのか。 ×月×日 週末の山行を取りやめたせいか体調がいい。体が軽い。モモヒキーズ(山の仲間)宴会は事務所シャチョー室が会場で新そばを食べる会。 ×月×日 乙川優三郎『生きる』(文春文庫)を読みはじめ、ぶっ飛んでしまった。亡き藩主への忠誠を示す「追腹」(後追い切腹)を禁じられた初老の地方武士の話だ。死ぬことを禁止され、娘と義絶、息子は切腹という失意の日々をつづった超クラ〜イ小説だが、格調高く人間の強さと一条の光明の輝きを描いている。 ×月×日 その昔、馬は「乗り物」や「運搬」のために多くの農家に(特に東日本では)飼われていたのではなく、もっぱら家の宝、財産としてペットとして飼われていた。少なくとも明治初めまでそういう習俗があった。使役ではなく家畜だった、と宮本常一が指摘している。労力や戦争に馬を活用してきたのは西日本で、これは乗馬という形で戦争の道具にしてきた「騎馬民族」の影響が深いのだそうだ。 ×月×日 これ以上ない晴天に恵まれ「内陸線」に乗ってきた。先週は「五能線」に乗ったし、来週は「鳥海山ろく線」に乗る予定。秋になると地元のローカル線に乗るひとり旅は、もう定番の行事。 ×月×日 今週は出張続き。頭を悩ますのが旅行用バッグ。ジーパンでもスーツでも不自然ではない旅用カバンってないものか。最近仙台・丸善で丈夫なビニール製本入れバッグと出あった(1500円)。大きさといい軽さといい丈夫さといい一泊二日の旅にはちょうどいい。 ×月×日 名古屋出張を終え、中部国際空港から飛び立って眼下を見下ろすと見たことのない巨大な山塊。飛騨山脈のど真ん中を飛んでいた。先日間近で見た白馬岳も見えた。乗鞍は見逃したが圧巻は妙高山、外輪がすぐ目の前にあった。 ×月×日 横手の種苗交換会へ。初めて気がついたのだが、食堂は麺類ばかりでご飯類のメニューがほとんどない。食品衛生法かなんかで「人間の手が加わる食品」には許可申請が必要になるからだろうか。もう何十年も交換会を見てきたが、これは気がつかなかったなあ。 ×月×日 夜になったら急に冷え込んできた。寝室の暖房を入れたら蛍光灯からポトリとカメムシが落ちてきた。ときどきプ〜ンとカメ臭がするので、前に退治したカメ公の残り香とばっかり思いこんでいたが、生存者がいた。カメムシの臭さって半端じゃないんです。 ×月×日 近所にリフォーム店がある。よく利用するのだが値段が高い。山用スパッツのピンが抜けたので縫ってもらうことに。ピンを留めるだけなのに1800円と言われた。やむなく少し離れた登山専門店へ。そこではスペアーがちゃんと常備されていて300円で新しいものに替えてくれた。 ×月×日 山形市で出版パーティがあり泊まり。次の日、蔵王に登って新庄に寄り、連泊予定だったが、どうにもいろいろ気がかりの仕事が後ろ髪を引き、幸い朝から雨模様だったので蔵王、新庄をキャンセル、急遽帰ってきた。 ×月×日 本は売れない。でも、つくる本があるというだけでもありがたい。といいながら実は昨日、断腸の思いである個人の「震災本」の出版依頼をお断りした。いい原稿だったのだが、うちでなければ、という仕事でもない。残された時間は多くない。「やらない」という選択肢も重要、と最近ようやく思えるようになってきた。 ×月×日 30万キロも乗ったボロ車が12月にようやく廃車、新しい車が来ることになっていた。が、タイの洪水で部品が届かず納期が来年に延びそう、と連絡が入る。この車で冬が越せるか。 ×月×日 「50歳を過ぎると、希望を持って朝を迎えるという日は少なくなるばかり」。昨夜読んでいた小説の中に出てきた一節だ。もう40年近く前の小説なので50歳を60歳に読み換えてもいいだろう。確かにこの言葉に実感はある。あるのだが立ち直りも早い。「本は売れなくなる一方だが、今つくってる本は別。これはひょっとして売れるかも」……寝起きのボンクラ頭で懲りずに中高年はニンマリしたりする。そうか、この飽くなきバカさ加減が、わが仕事の持続の源泉であったのか。 ×月×日 今年予定していた本はほぼ出そろった。ちょっとのんびりしたい気分だが、「いつものんびりしてるじゃないか」という外野の声も聞こえそう。 ×月×日 もう5、6年同じ会社の手帳やカレンダーを使っている。ロフトでしか販売していないので東京や仙台に行った時に買うのだが、今年から秋田駅前に小さなロフトがオープンした。さっそく買い求めてきたのだが簡単に買えるようになるとありがたみも薄れる、ような気がする。 ×月×日 新聞一面下に3段分のスペースをとった広告を「全3」と業界用語でいう。今日、仙台の河北新報にその全3広告を打つ。河北をとっていないので朝一番でコンビニに買いに行くと「新聞休刊日」の張り紙。新聞が一紙もない。仙台から個人注文の電話が入りはじめ仙台では新聞が出ている。新聞休刊日って全国共通の決まり事だと思ったが、いろんな事情で河北はこの日発売されていた。 ×月×日 ごくたまにだが日程が数時間刻みで立て込んでしまう日がある。今日がその日だ。朝から健康診断人間ドック。新聞県版の連載の締め切りの日で、午後から国際交流センターから外国のお客さん。夜は山仲間モモヒキーズの月1宴会。一番厄介なのは健診のための「検便」。これは昨日と今日の2日間用意しなければならない。面倒くさい。 ×月×日 山仲間たちはこの頃、秋田県内にある約60座のリストから皆が共通で「登っていない山」を選びだし集中的にチャレンジする「遊び」に夢中。最近だけでも大石岳(大仙市)竜ケ森(大館市)小岳(二ツ井)とメジャーでない山ばっかり。来週末は雄長子内岳(湯沢市)、これもはじめて耳にする山だ。バカオヤジたちだなあ。 ×月×日 昨夜読んだ『計画と無計画のあいだ』(三島邦弘著)は今注目の若手出版人の自伝。出版業界の本は概してつまらないのが常だが、この本は珍しく面白かった。最近このミシマ社が出した本をよく読んでいる。 ×月×日 寒い。手袋の季節だ。今朝、その手袋を整理していたら片手しかないものが三本も出てきた。無いのはすべて右手。柄が違っても両手がそろえば一双として使うつもりだったが、人生はそううまくいかない。 ×月×日 12月を目前にして仙台、東京と出張続きの日々。往復の電車で本が読めるのはうれしいがホテルのベッドではうまく寝付けない。 |
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*もう年末です。いつもより冬号は早めの発送になったのは、何かと忙しくなる師走を避けたかったからです。他意はありません
*今年はどうしたことか新刊本が多い年でした。 例年のことながら年賀状は欠礼しています。 *年末恒例の「執筆者アンケート」も今回はパス。力作の御原稿があれば自薦他薦構いませんので、ご連絡ください。(あ) | ![]() |
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