ご存知のように地方からはくしの歯が抜けるように書店が消えています。
出版業界の隅っこにいる人間として、町から本屋さんが消えていくのは無念であり、かつ死活問題ですが、その一方で、これは好き嫌いやイデオロギーとは関係のない「あらがえない大きな流れ」では、という思い(諦観)も強くあります。

残念ながらこの「大きな流れ」はたぶん誰にも止められない川が上流から下流に流れるようなものかもしれません。たとえば昭和40年代、町村にたくさんあった和服(着物)屋さんがほとんど姿を消しました。着物は日本の文化だ、と声高に叫んでも、巷から着物を着る暮らしが消えたのですから、その商売が消滅するのは当然です。本屋さんも同じ運命にあるような気がします。ライフスタイルから「読書」が消えつつあるのに、本屋さんだけは安泰、という理屈は通らないからです。

そうした地方の現実とは別に、都市部ではまだ本屋さんが生き残っています。これはかろうじて電車通勤があるためではないでしょうか。都市の長時間の電車通勤では「読書」という「時間つぶし」が重要で、逆に地方での通勤は車か自転車がほとんどですから読書は不可能です。電車にはそれ以外にも「読書」効果があります。「痴漢冤罪」予防です。満員電車で両手が空いていると痴漢にまちがわれます。両手がふさがれる読書行為は痴漢冤罪予防の最強グッズでもあるのです(これはウソ)。

ネット書店アマゾンが日本での発売もはじめた電子書籍専用端末機「キンドル」も「本は紙」派にとって強敵ですネ。わずか2万円強でこの読書端末機は入手でき、かつ新聞や雑誌の定期購読、新刊購入がほんの数百円でできます。グーグルと提携し著作権の切れた名作100万冊の無料ダウンロードもはじめるそうです。アメリカでのキンドルの普及は「もう印刷所も本屋も要りません」というコミットメントでもあります。

それって英語圏の話だろう、とツッコまれそうですが来年4月、講談社から小田実全集が出ます。これは紙でなく電子書籍。PCやキンドルがなければ読めません。辞書類同様、大手出版社の電子書籍は「キンドル」の普及で一気に加速するでしょう。本場アメリカでは今シェークスピア全集が300円ぐらいでダウンロードできるそうです。数年後、日本でも夏目漱石全集が1000円くらいでダウンロードできる日も……。これはあらがえない大きな流れ、だと思っています。

×月×日 ブラジル・アマゾンから日本人移民80周年の記念式典の招待状が届く。招待状をもらうのは生まれてはじめてかも。とても行けそうにないが、招待状は机の前に貼り出し、毎日ながめている。
×月×日 プロ野球のベンチで選手や監督がペットボトルに入った黄色い液体を飲んでいる。山に持ってくる人がいるので知っているのだが、あれはクエン酸。黄色はビタミンB2の色でレモンや梅干、黒酢の代り。ペットボトル用の顆粒がスポーツ店で売っている。けっこう酸っぱくて、疲れた身体に効く。
×月×日 朝夕めっきり冷え込む。お盆を過ぎると秋風が吹く、ということを実感させられる。昨夜は友人たちと「クジラのナス貝焼き」。夏場の重労働で失う塩分や脂肪分を、この夏のなべ料理で雪国の人間は補ってきた。
×月×日 北海道の米業者が「あきたこまち100%」と表示した福島県産コシヒカリを混ぜたコメを売った、として道庁から改善の指示を受けたというベタ記事。こんな些細なことが記事になったのは福島コシのほうが実はこまちより値段が高いから。「人が犬にかみつく」類のニュースなのである。業者はうまいコメを売って客離れを防ぎたかった、というのだが、こまちのブランド力もここまで落ちた、という「下げ」含みの記事。
×月×日 陸上競技を観るのが好きだ。世界陸上がはじまった。十種競技(女子は七種)は一度でいいからナマで観たい競技。ベルリンで観戦していた友人から「10種競技の池田大介の笑顔がすばらしかった」とメール。10種競技観戦の難点は競技毎に点々と観客席を移動する必要があること、チケット確保が異常に難しいのだそうだ。
×月×日 8月は森吉・秋田駒・乳頭・栗駒と秋田の代表的な山を立て続けに登った。9月は山のリーダーの仕事が忙しく山行予定は2本のみ。1本は八甲田登山だが、台風で中止。もう1本は裏岩手縦走だが、これは6月経験済みなのでパス。
×月×日 弘前へ。出版の師匠でもある津軽書房の高橋彰一さんの墓参り。亡くなってもう10年も経つのだが、なぜか無性に訪ねたくなった。
×月×日 9月は山行がないせいか週末は「大人の休日切符」で長野や函館まで遠出。いくら新幹線に乗っても1万2千円というのは魅力だが、けっこう電車は疲れる。
×月×日 プロ野球巨人軍の高林恒夫さんの死亡記事。立大時代から好きな選手だったが、プロ生活わずか5年というのは驚いた。享年71。自宅が「神保町1の1」とある通り、本好きには有名な古書店の店主でもある。何度かご本人を店内で見かけドキドキしたのを覚えている。ご冥福をお祈りしたい。
×月×日 旅先の盛岡の本屋で買い求めた藤原新也著『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』という本の「尾瀬に死す」というエッセイを立ち読み、呆然となる。盛岡駅中のさわや書店に行くといつもこうだ。本来、本屋はもっともスリリングでエキサイティングな場所、そのことをこの本屋は思い出させてくれる。
×月×日 アウトドア・イベントがあり、仕事を休んで参加。1日目は鳥海山の弟分の丁岳登山、2日目は羽州街道起点である福島・桑折の小坂峠と金山峠の現地街道調査会。どちらも一人で行くことが困難な場所。深い森の中でリフレッシュしてきた。
×月×日 カミさんを誘って湯沢の父親の墓参りに。雨の中、墓地に人影はなかったが、やけに墓の供物が目立った。心がけのいい方々が多いんだなあ、と夫婦で感心しながら帰って来たのだが、今日が「彼岸の中日」であることを2人とも忘れていた。いやはや、怪我の功名……じゃないか。
×月×日 わが誕生日、恥ずかしながら還暦である。カミさんがお祝いにご馳走してくれるというので近所の寿司屋さんに。勘定の段階で「細かいお金がない」などと言い出し、けっきょくは自分のカードで支払うハメに。納得いかないなァ。
×月×日 オーストラリアの小さな町でペットボトル入り飲料水が販売禁止、というベタ記事。町では水道水を飲むように進めているのだそうだ。一度買ったペットボトルは水道水(浄水)やお茶を淹れて何十回も使うタイプなので(ただのケチだが)、この町の行動に敬意。ついでに言わせてもらうと自動販売機も不必要では。
×月×日 この10日間、咽喉がいがらっぽく、時々せきが出る。新型インフルエンザの心配もあったが、一向に熱は出ないし、よく眠られるし、食欲も普通だ。ハードな山歩きの疲れが出た、と勝手に結論づけて夜の散歩も自粛中。
×月×日  半年ぶりの健康診断。いやな日だけど、この「いや」ばっかりは好き嫌いで回避できない。血圧も体重もほとんどの数値が半年前より上でガックリ。今日は体調が悪く、少し熱っぽい。こんな日にかぎって健診なんだからイヤになる。
×月×日 昨夜、登別の温泉に入った。といっても「ツムラの日本の名湯」を浴槽に溶いただけ。ツムラから「日本の名湯セット」が送られてきたのは、乳頭温泉のパッケージ写真をうちで提供したためだ。今日から毎日、日本の名湯を楽しむ予定である。
×月×日 咳はとまったがユル〜イ頭痛が止まらない。咳が出始めてから2週間になるから、この体調不良はちょっとやっかいかも。
×月×日 連休はどこへも行かず、仕事をするわけでもなく、ただぼんやり家の周辺で逼塞。身体の不調は相変わらずで、ひとつ良くなると別のところが痛み出すといった具合。身体の各パートが、これまでの不摂生と傲岸不遜さを嘲笑っている感じ。試練なのか末期症状なのか、早くこのトンネルを抜け出したい。
×月×日 今期の決算が終わった。数字は去年よりよかったが黒字幅は減少。年々厳しくなる。しばらくのたうちまわって仕事を続けるしかない。着地点がいっこうに見えないのはシンドイ。
×月×日 体調がもとに戻った途端、悪い虫がうごめきだした。昼に近所のスポーツクラブに出かけ汗を流してきた。ストレッチと軽いエアロだけだが、やっぱり汗を流すのは気持ちいい。
×月×日 いつか北アルプスに登ってみたい、とおもっているのだが、よく考えたら高所恐怖症だった。あの大キレットはTVで観ただけで、とても無理。
高所といえば昨夜のTV「上海的蜘蛛人」もすごかった。高層ビルの出稼ぎ窓ふき職人たちのルポで、観てるだけでも怖い。なかなか良い番組で、トイレにも行けないほどだった。
×月×日 テンション下がりっぱなしの10月がようやく終わった。31日、庄内側の鳥海山・万助小屋の辺りをハイキング。10月最初にして最後の山行である。快晴に恵まれ、すっかり心の霧が晴れた。秋は登山より森の散策がいい。調子に乗って夜、奥田英朗著『無理』540ページを一気読み。そうか結末はそうくるか。
×月×日 悪名高き社会保険庁へ。年金受給の書類を持っていったのだが、奇跡的に1発で手続き完了。あまりに簡単で肩すかしを食った気分。
×月×日 35年間お世話になった印刷所の元副社長Fさんが逝去。享年76。天童市での葬儀に駆けつけるが、よく考えると小生のご先祖様もこの地の出身。1603年に天童から秋田・増田村に移った記録が残っている。Fさんには山形の蕎麦屋さんによく連れて行ってもらったなあ。村山の「あらきそば」なんてテイクアウトでお土産に何度も持ってきてもらった。蕎麦のおいしさに目覚めたのはこの「あらきそば」だった。もう。2人で蕎麦屋巡りをすることもできなくなった。合掌。
×月×日 天童の帰りに仙台へ。仙台ではエスカレーターに乗る時、ほとんどの人が右側に立って乗る。東京は左側だ。ところが仙台駅前ロフトに入ると、ほとんどの人が左側に立っていた。あれ? ロフトは若者の店なので東京の影響があるのかな。西日本に多いといわれる右側乗りから仙台市民全体が離脱しつつあるのかも。誰か「真相」を知っていたら、教えてください。
×月×日 恒例の種苗交換会。開催地は秋田市で今年が132回目。驚くなかれ132年間、日清、日露、太平洋戦争の間、一度も休会なしに続いている秋田県最大の「農民の祭り」である。ある雑誌に原稿を書くため取材に行く。
×月×日 若いころ心酔したレヴィ・ストロースが死んだ。サルトルの死より何倍もショックだ。しかしメディアはいつから彼の名前を「レビストロース」と統一表記するようになったのか。
×月×日 朝起きたら左足首のあたりに激痛。寝ている間にひねったのだろうか。足を引きずりながら友人と潟上市の水中写真家・中村征夫さんの写真美術館「ブルーホール」オープニング・パーティに出席。

*冬号は新刊が珍しくゼロです。過去に刊行された本ばかりですが、どの本も今も売れ続けているロングセラーです。
*毎年末、小舎の執筆者の方々にお送りしている「執筆者アンケート」のコピーを今年も「お遊び」で同封しました。小舎の執筆者の方々には返信用封筒付きでお送りし、翌年の出版企画スケジュールの参考にさせてもらっているものです。内部文書のようなものなのですが、ま、ご参考までに。
*「検証 藤里町連続児童殺人事件」は書名が「藤里町」の部分が「秋田」に変わりました。