羊頭を超える狗肉を売れ!

 比内地鶏の偽装を行っていた「食肉加工会社・比内鶏」の経営幹部が逮捕されました。
 偽装行為はいけないことであり、厳しく断罪されて然るべきなのですが、私が気になったのは「なぜ悪いこととは知りながら止められなかったのか?」という点でした。
 逮捕者の中には、私と同世代の人もいました。もしかするとこの私も、運命の巡り会わせ次第によっては、「お縄」になってしまった一人だったのかもしれない。
 同じ秋田県内で暮らす私にとっては、他人事ではない、身につまされる大事件なのでした。
 でも、私は皮膚感覚としてよく分かるのですが、このような組織的暴走行為は、田舎では防ぎようがない。
 だって、ホジナシ会社を辞めても、他に行くところがないんだもの!
 都会と違って、転職の機会が無いからね。これは悲惨ですよ。
 運悪くトンデモ経営者と出会ったら最後、ずっと付き合い続けないと暮らしていけない。
「他所の土地へ移ればいいのでは?」という至極もっともな意見もあるだろうが、地方で暮らす人の多くは「移動できない理由があるから地方に住んでいる」のであって、「引越す」というオプションは行使し難い。
 かくして地方の零細企業従業員達は、トンデモ経営者と共にどこまでもどこまでも堕ちていく。
 この問題を解決するのは難しいが、あえていえば「起業家育成教育を施す」ことであろう。
 転職の機会がなくてトンデモ組織から脱け出せないのなら、自分の力で職を作り出し、脱出してもらうしかない。
 中学生にも、簿記会計ぐらい教えておいた方がいいと思う。
 それと、今ならインターネットも必須でしょう。ネットを使えば、せまい地域社会なんか一気に飛び越えて、世界中60億人の市場にリーチできますからね。
 逆に都会だと、転職の機会も多いし、専門家としての自己実現の道もあるから、起業家教育は無くてもいいように思う。
 さて、それにしても今回の事件でつくづく感じてしまったのは、「地域ブランドって危なくないか?」ということ。
 だって、ホジナシ会社が何かひとつヘマやらかしただけで、一挙に全関連業種の売上げダウンですからね。
 自分で管理できないところがとても怖い。地域ブランドを超えた、何か独自のウリが必要だと思いました。
 そこで、秋田県内の食肉加工業者が、これからどうやって汚名返上を図っていくのか考えてみたら、一度原点に戻り、「食肉の加工技術そのもの」で勝負してみるべきだろうと思いました。
 何も難しく考えることはなくて、美味けりゃいいんである。
 美味けりゃ、比内鶏だろうがカラスだろうが関係ねえ〜。
「カラス肉でも比内鶏の味は出せる、ウチは比内似鶏(ひないじどり)社だ!」
 そんなベンチャー企業よ、出でよ!

(報道陣のフラッシュの音)パシャッ、パシャッ、パシャッ。
「比内似鶏社の社長、今回の偽装事件の真相について、コメントをお願いします」
「申し訳ありません。やはりカラスで比内鶏の味を出すのは難しく、比内地鶏を混ぜて使ってしまいました」

 よくよく考えると「比内鶏社」という社名自体が、なんだか「鶏ブローカー」みたいでヘンです。
 その点「ミートホープ」は直訳すれば「肉希望」、ということは「肉ではない」ということか?
 社名からも「食肉加工の錬金術師」ぶりが滲み出ていて、「見破れまい!」と消費者へ挑戦していたように思える。
08年5月7日
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