この連載は「秋田艶笑譚(正)」を底本としています。
16
ある春闘
 H村は典型的な山村である。農林業を除いては、これといった産業も育たず、過疎化は進む一方である。それでも、ここ二、三年、村長の尽力でわずかばかり、下請工場が誘致された。
 とは言っても、誘致される会社はどれもみな零細な経営内容で、賃金は極めつきの低さであった。若者は相も変らず村を去り、村長窮余の一策は、かろうじて出稼ぎを減らすのに役立っただけである。
 騒ぎは四月、M工場に起きた。M工場は誘致された会社の中では、最も賃金の安い下請の製縫工場である。近郷の農家の主婦が三〇人ほど働いている。
 なんと、この従業員達が地区労の熱心な働きかけに反応し、未組識ながら賃金値上げを中心に据えた、春闘を闘うことになった。これまで、一度もストライキを経験した事のない主婦達のこと。臨時の委員長を決め、プラカード、スローガン書き、となかなかの賑わいであったの
 夕方の六時から、延々四時間を費やして、翌日の準備はすべて整った。三、四枚の赤旗のそばには、大書されたスローガンが、墨の乾くのをまっている。そこにはたどたどしい文字で、三項目の要求が書かれていた。
 一、団交に応じろ!
 一、生理休暇をなくすな!
 一、ベースアップをしろ!
 翌朝、いよいよストライキ決行の時が来た。めいめい鉢巻をしめ、ある者は赤旗を持ち、ある者はプラカードをしっかりと握りしめ、来賓であり、指導者でもある地区労職員の到着を待った。
 ほどなくして、彼らを乗せた車がやって来た。大歓声の中、手を振りながら車から降り立った事務局長は、一礼すると正面に掲げられたスローガンに目を据えた。と、すぐに彼は狂ったように笑い出し、耐えがたいという風に、地べたに伏した。笑いは止まず、目には涙さえ浮かべている。
 この予期しない事態によって、ストライキの気勢はみごとにそがれた。しかし、その原因が自分達の掲げたスローガンにあることを気付いた者は、誰一人としていなかった。ちなみに誰のイタヅラか、スローガンは次のように修正を加えられていた。
 一、性交に応じろ!
 一、生理をなくすな!
 一、ペニスアップをしろ!
 これを知った工場長はニンマリと笑み、亭主達は青ざめた。
(よのしんや)
『あきた落語』
無明舎出版・編
B6判
194ページ
1987年刊
1,020円
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『続・あきた落語』
無明舎出版・編
B6判
188ページ
1987年刊
1,020円
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『続々・あきた落語』
無明舎出版・編
B6判
207ページ
1987年刊
1,020円
品切れ
『秋田艶笑譚』
無明舎出版・編
B6判
182ページ
1980年刊
1,020円
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『続・秋田艶笑譚』
無明舎出版・編
B6判
181ページ
1980年刊
1,020円
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『続々・秋田艶笑譚』
無明舎出版・編
B6判
174ページ
1980年刊
1,020円
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『あきた夜這い物語』
無明舎出版・編
B6判
176ページ
1986年刊
1,020円
品切れ
『続・あきた夜這い物語』
無明舎出版・編
B6判
193ページ
1986年刊
1,020円
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『続々・あきた夜這い物語』
無明舎出版・編
B6判
199ページ
1987年刊
1,020円
品切れ
『あきた音頭 裏本』
無明舎出版・編
新書判
132ページ
1995年刊
816円
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『あきた音頭 艶本』
無明舎出版・編
新書判
132ページ
1995年刊
816円
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『あきた音頭 春本』
無明舎出版・編
新書判
132ページ
1995年刊
816円
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『あきた風流「艶」ばなし
嫁いびり編』
無明舎出版・編
B6判
177ページ
2001年刊
1,050円
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『あきた風流「艶」ばなし
夜ばい編』
無明舎出版・編
B6判
163ページ
2001年刊
1,050円
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『あきた風流「艶」ばなし
千夜一夜編』
無明舎出版・編
B6判
187ページ
2001年刊
1,050円
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『あおもり夜這い物語』
無明舎出版・編
B6判
140ページ
1997年刊
1,050円
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『みやぎ艶笑風流譚』
佐々木徳夫・著
B6判
243ページ
1997年刊
1,575円
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『ふくしま艶笑譚』
加藤貞仁・著
B6判
173ページ
1997年刊
1,050円
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『みちのく
「艶笑・昔話」
探訪記』
佐々木徳夫・著
B6判
243ページ
1996年刊
1,835円
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『はなすて
けらしぇ
仙台弁』
佐々木徳夫・著
B6判
174ページ
1999年刊
1,260円
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