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 まかど温泉は、下北半島への南玄関口にあたる野辺地(のへじ)町の、西側山麓にある。 
 「まかど」とは、アイヌ語で「マカントウ(山へ登る口の沼)」という意味で、そのあたりからお湯が湧き出ていたらしい。300年ほど前の正徳(しょうとく)年間には浴舎が設けられ、湯治場としてにぎわっていたという。 
 「富士屋ホテル」は、国道4号から山のほうへ、約2.5キロメートル上った突き当たりだ。6階建ての白い洋館は、北にひらける陸奥湾を見晴かす、絶好のビューポイントとなっている。
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 大浴場は2階にある。のれんに「鹿の湯」とあるのが男湯、「鶴の湯」とあるのが女湯だ。どちらもヒバ材をふんだんに使った造りで、明るく、広い。 
 開放感があるのは、壁の2面が総ガラス張りになっているからだ。しかも、視野に入るのは、豊かな草木である。自然の地形を生かした、心憎いばかりの設計といえよう。 
 浴槽も、木の香がただようヒバ造りだ。透明な湯に体を沈めると、やわらかな木肌の感触が心地よく、縁を両腕で抱え込んで、ほおずりしたくなる。湯温がぬるめなのも、ゆったりと入るには好都合だ。 
 泉質がアルカリ性なので、肌を磨こうと少し長湯になったが、空調が行き届いているためか、頭はしゃんとしていた。ヒバサウナはスチーム式で、使用時間は10時半から21 時までである。 
 大浴場からは、それぞれ露天ぶろに出られる。自然石を組んだ岩ぶろだ。夏はしたたる緑、冬は一面の銀世界に包まれることになる。 
 ふろ上がりには、浴場前のフロアの籐(とう)いすで、景色を眺めつつ休むもよし、  畳の小上がりで、足を投げ出してくつろぐもよし。マッサージャーで体をもみほぐすなどして、再び湯に入るのも自由である。
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 富士屋ホテルの立ち寄り入浴は、入館料システムになっていて、バスタオル、浴用タオル、シャンプーの類は、備え付けのものを利用できる。ドライヤーの使用も無料だ。 
 女性は化粧品だけ持って、男性なら手ぶらで入れる気軽さが、何より歓迎されている。 
 冬場、隣接する国設まかど温泉スキー場の利用者には、浴場割引もあるため、スキーやスノーボードでかいた汗を、すっきりと流して帰途につく人も多い。 
 白鳥の飛来地、浅所(あさどころ)海岸までは車で30分の距離だ。
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