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ずいぶん若いころだが、ポットン、ポットンと一定間隔で落ちる小さな水滴の音に、まるで戦慄のようなものを覚えたことがある。それは時間というとらえどころないものへの恐怖に似たものであった。決して避けることの出来ないものに対してどうするすべもないというこの悲痛な思いが胸を締めつけていた。(中略)
今、夕暮れのほの暗さの中で、まるで銅版画のように白く浮きでているサンカヨウの花と向かいあいながら、以前と同じように時の過ぎ去ることへの説明しがたい感情がわいてきたことを感じとっていたが、同時に、それは解きがたいものへの恐怖だけではなく、もっと複雑で異質なものであることにも気づいていた。
もうすぐ夜が来る。
(本文より一部抜粋) |