安成貞雄を祖先とす[品切]
A5判・471頁 定価3600円+税 冊数
第一章 阿仁に生まれて
安成貞雄逝く──その死を悼む人びと 1
父正治、その出自と人となり 5
乃木希典と若き日の安成正治 6
揺籃の地 阿仁銅山 13
古河経営で解雇──惨たる東京往還 16
東雲製煉所──渡船で通学 17
第二の故郷能代──渟城小と小原日時計 19

第二章 県立大館中学校第一期生
年少夢は海賊、渾名は弁慶 25
寮で起居──風貌とはそぐわぬ「風紀係」 27
「予は如何にして揚足取となりしか」 29
西館初代校長とその排斥運動 31
兄弟の詩文は全校に聳つ 35
同盟休校首謀で停学処分 38
恩師青柳有美との出会い 40

第三章 蕗薹と鬼蔦─文学的出発は俳句
初号は魯智深、斎藤蕗葉の掖誘 45
師島田五空と『俳星』 48
校内に句結社星秋会を主宰 52
一人歌仙を巻く──早熟の中学四年生 59

第四章 早稲田大学そして社会主義へ
中学の卒業成績は十番 65
二郎、三郎は中学中退 68
紅露夢み早稲田進学 72
早稲田社会学会──社会主義の洗礼 75
『火鞭』──処女作発表の舞台 79
秀湖の『黄昏』──学苑の若き群像 86
二郎の上京、やがて一家も 88
二郎と魯庵と金尾文淵堂 90
回覧雑誌『北斗』と『新聲』編集 97
馬場孤蝶の講筵に参ず 102
平民社──荒畑寒村との出会い 106

第五章 欧米の文芸思潮・科学文化の紹介
わが国初の週刊誌『サンデー』 113
オブローモフに魅せられて 117
『新聲』『趣味』での仕事 120
『早稲田文学』その他 122
万朝報と懸賞小説 126
大逆事件の陰で 132

第六章 女と酒と野依秀市と
遊蕩三昧── 阿部幹三と和気律次郎 139
実業之世界入社 144
取材先秋田での流連荒亡 147
遊蕩にも理論──女性関係は純情 150
不見転芸者沢子との一件 155
有美の歪曲と「沢子一件」の真相 159

第七章 貞雄の先駆的業績の数々
科学的経営管理法の紹介 167
やまと新聞でも英文翻訳 168
泰西文芸映画の興行 172
アルセーヌ・ルパンの日本紹介 174
『金髪美人』と『春日燈籠』 178
芸術座の名付け 180
社論と容れず──やまと退社 182

第八章 江湖に浪吟す─文壇のアウトサイダー
安成貞雄と『近代思想』 187
木村鷹太郎の古代史論を痛罵 191
安成二郎と『近代思想』 193
近代思想社小集 195
『生活と芸術』──文壇論争の萌芽 200
『生活と芸術』の位置と彼らの小集 207
売文社と『へちまの花』 210
『文壇与太話』──生涯唯一の著書 215
中沢臨川の剽窃を暴く  220
文壇の与太大王 222
「高等幇間志願の辞」と原稿鑑定業 224
誤訳指摘──本間久雄『芸術の起源』など 229
「遊蕩文学撲滅」可・不可能論争 234

第九章 大正文壇を縦横無尽に
多分野で諸雑誌に執筆 245
シリーズ《欧米文明進歩の跡》 250
貧困生活──くらの小坂逃避 254
馬場孤蝶の立候補と『現代文集』 257
相馬御風を退隠に追込む 261
新渡戸博士の『武士道』批判 268
『女の世界』『世の中』の創刊 272
文学村の与太的三奇人 277

幻の『探偵雑誌』 279
大阪放浪と国枝史郎 285
謎の恋人──加島小夜子 287
第十章 そして晩年、その死まで
雑誌『中外』──最後の外働き 295
兄に「自殺をすすめる書」 299
賜天覧の『絶対の慈悲に浴して』 305
晩年のオアシス泊鴎会 308
下田転地療養 311
九州、四国考古探求の旅 313
義によって──高橋是清の選挙応援 319
「価値ある怠け者」──雪嶺の貞雄観 321

第十一章 安成二郎(一)──実業之世界時代まで
作家志望──秋声の門を叩く 331
『週刊サンデー』と『楽天パック』 335
処女出版──警句集『女と悪魔』 338
妻と子──貧乏を詠む 340
実業之世界社時代 342
処女歌集『貧乏と恋と』 351
新雑誌『世の中』編集長 354
日陰茶屋事件──大杉栄とのこと 359
歌文集『恋の絵巻』 363
退社は青柳有美との軋礫か 365

第十二章 安成二郎(二)─読売、毎日新聞時代
読売の変革期に入社──婦人欄の拡充 371
星菫派回帰──蕭々・雅子と春草会 375
短編集『子を打つ』──藤村が推賞 378
『黒瞳』創刊──秘めやかな思い人 382
新たな舞台は婦人雑誌 385
大毎嘱託記者──露伴と華厳滝へ 392
屈託ない浪々の日々 397
平凡社『大百科事典』編集部 401
新聞歌壇選者と主宰誌『美奈可み』 402
高麗神社の修復造営に奔走 404
俳句と旅の気まま暮らし 406

第十三章 安成二郎(三)─その晩年
歌集『夜知麻多』と月明会 413
満鮮百余日の旅 417
随筆集『白雲の宿』 420
焼跡から詠む──古典歌のパロディ 423
阿佐ヶ谷会──将棋と俳句三昧 426
古里に「豊葦原…」歌碑建立 430

第十四章 三郎、くら、四郎たち
安成三郎──「福原信三の手」 435
『写真芸術』から『建築の日本』創刊へ 441
俳句と民俗学と中国怪異譚と 443
寸心 西田幾多郎歌碑を建てる 446
安成くら──誌友会と『花の鍵』 447
終の伴侶 窪田栄との安らいだ晩年 450
安成四郎──ファブルの翻訳 453

五兄妹の略年譜 460

あとがきのような──
安成貞雄をめぐる、小さな、小さな自分史 464


back