加藤富夫 [2024/04/25,09:45:31]
4月に入って「憑かれたように」高校時代の担任だった加藤富夫先生の遺した小説を読み漁っている。若くして事故死した先生には生前1冊の著作しかない。死後、秋田書房から2巻本の「作品集」が刊行されているが、これらを合わせても、9本の作品が今も読むことが可能な作品だ。10年間という短い創作期間に発表された先生の作品は18本。そのほとんどが「文學界」と「早稲田文学」に掲載されている。その雑誌のバックナンバーにはまだ手を出していないが、新人賞受賞作や4回の芥川賞候補作は読了した9編にすべて入っている。予科練の生き残りであり、戦後の瓦礫の風景のなかで、現代の不安と恐怖を、土俗的視座から描き続け、将来を嘱望された作家は、もっと評価されてもいい。これは私の単なる身びいきだろうか。血族や鎮魂といったテーマの重苦しさを嫌う向きもあるだろうが、加藤文学の底に流れている「喜劇性」は、秋田大学時代に所属していた演劇サークルの活動の中ではぐくまれたもののようだ。図書館に通って未読の9編を読み通してみたいと思っている。
戦時下 [2024/04/24,09:56:50]
戦時下(太平洋戦争)の秋田の若者たちのことを調べていたら、興味深い記録に出会った。昭和18年、県下の旧制中学校では7月に「全県中等学校合同演習」という大規模なイベントを開催していた。これは県南、県北に分かれ県下の中学生が行軍し、能代の東雲で遭遇戦を展開する、というものだ。例えば横手中学生ならば、木銃を担いで炎天下、神宮寺、和田、金足と北上、徹夜で能代まで歩き通す。夕食は民家でとり、宿舎は国民学校だ。能代の東雲原が演習場で、ここで県北と県南の中学生が空砲と木銃で対決する。これが当時の少年たちの「まつり」であり「遠足」でもあったわけだ。昭和16年にはすでに中学生の学帽は戦闘帽に代わり、制服も国防色といわれるカーキ色、登下校時はゲートルをまき下駄や地下足袋だ。戦況が厳しくなる昭和19年、3年生終了と共に軍の人事部の割り当てを受け予科練や幹部候補生に半強制的に志願させられるものが急増する。こんな時代があったのだ。
寝すぎ [2024/04/23,09:52:00]
週末は決まって山や外に出かけるので、週日、疲れからか寝坊をすることが多くなった。いつもの目覚まし時計で起きるのだが「もう20分」などと思っているうちに1時間ぐらい熟睡してしまうのだ。年をとると早起きになるというが、当方は全く逆。たっぷり7時間は寝ている。最新の医学的発見では、高齢者の「寝すぎ」は問題あり、ということになっているようだ。「寝すぎ」は病気だという人までいる。TVを見ながらうとうとすることも多くなった。ナイターなど半分は夢のなか。ということはこれも睡眠時間に加算すると1日8時間以上は寝ている計算になる。これはちょっとまずいなあ。
見え方 [2024/04/22,09:30:38]
いろんな方向から鳥海山を見てきたが、十文字から見る鳥海山が一番きれいだ。庄内や由利本荘からは逆に近すぎて粗も同時に見えてしまう。県南部から見える鳥海山は何もかもがちょうどいい距離感で、全体の美しさが「過不足なく露呈」している。アップのように「しわ」は見えないし、プロポーションの良さだけが際立っている。昨日の鳥海山は青空に映え、真っ白に輝いて、さらに湯沢市のわが生家裏からも、ちゃんとその雄姿が見えた。住んでいたころ「鳥海山が見える」などどという記憶はまったくない。それどころではない日々だったのだろう。これはだから自分的には大発見。湯沢では両親と、高校時代の恩師・加藤富夫先生の墓参り。しっかりいろんなことを報告してきた。肝心の調べ物のあった湯沢市立図書館は、なんと日曜に関わらず休館日。そのかわりと言ってはヘンだが高校時代の図書館だった「旧雄勝郡会議事堂」をガイド付きで見学してきた。
湯沢へ [2024/04/21,09:39:06]
今日は湯沢方面へドライブ。アクティブだなあジブン。両親の墓参りも兼ねてだが、いろいろ不義理を重ねている方へのあいさつなども済ませてくる。この際だからと訪ねたい場所や人をリストアップしていたら、メモ帳がいっぱいになってしまった。これじゃあ最低3日は必要だ。ということで絞りに絞って4カ所を廻ってくる予定。ちょっと寒そうな日よりなので、防寒対策などは、山用の装備を車に積み込んだまま。コッフェルもあるので、へんな喫茶店に入るよりは、近くの公園で花見しながらコーヒーでも飲むのもいいかもしれない。それでは行ってきます。
中岳へ [2024/04/20,13:47:38]
今日の写真は、先日の前岳(ザブーン口)の登山道で会ったカモシカ。オスの成獣のようで、とにかく大きかった。山の中でばったり会うと、彼らは威厳に満ちている。人間なんてフンッという感じだ。実は今日も懲りずに前岳に登ってきた。オーパス・リフト終点から登り始め、中岳まで行く予定だったのだが、雨がいっこうに止まず、前岳でしぶしぶ帰ってきた。広小路より週末は混んでいる場所なのだが、今日はさすがに一人しか登山者とは出会わなかった。こんな日もある。とにかく寒いし、風は強いし、小雨まじりの曇天に悩まされるづけた。オーパス・リフト終点の駐車場の場所は事前に調べていったので迷わなかった。このルートからだと女人堂までは1時間弱。2カ所ほど急峻な坂があるが、ここはちゃんとトラバースできるようにゆるやかな道が作られている。中岳まで行くにはこのコースがいいようだ。次回は成功させよう。
名言 [2024/04/19,10:20:10]
もう、また、週末が来てしまった。目に見えるような仕事は何一つしていない。なのに時間だけは虚しく、矢のごとく、ものすごいスピードで過ぎ去っていく。先週末は2日連続同じ山を登るという、自分的には初めての体験をした。あの経験はまだ体の隅々に疲労や痛みとしてしっかり身体に刻印されている。こうして記憶に残る出来事が週に一つでもあれば人生の充実感はまた違ったものになるのだろう。さて今週末はどうしたものか。昨夜、TVを観ていたら宇多田ヒカルという歌手が「不安を克服する方法は?」と訊かれ、「筋トレで乗り越えます」と言っていた。けだし名言だ。精神の不安定さは肉体のトレーニングで克服できる、というのは同感できる。散歩の途中にやるだけの「ナンチャッテ筋トレ」だが、それでも「ヤッタゾ!」という充足感はある。
すごい本 [2024/04/18,11:24:25]
終戦直後、秋田の山村で20歳前の若者3人が、進駐軍のアメリカ兵殺害のためにテロの訓練をはじめた。決行の日は近づくが……(「玩具の兵隊」)。日露戦争時に海軍下士官だった父親が自分の学校に戦意高揚のための講演に来た。緊張のあまり、ほとんど講談のような語りで同級生たちの失笑を買う父の姿に……(「口髭と虱」)。村はずれの谷地に住む数奇な運命を生きる巫女の半生からみえてきたものは……(「神の女」)。蔵の中にいる人間ほどの巨大ネズミを捕まえる算段する親子はが蔵で見つけたのは……(「鼠おとし」。加藤富夫の小説集『口髭と虱』は、村の陰湿な風土や濃すぎる人間関係といった暗く重いテーマを描きながらも、どこか突き抜けた青空のようなユーモアが背景にたゆたっている。妄想や幻影に取りつかれて、結局は実りのない作業に没頭する人間を描いた作品の多くは、半世紀たった今もまったく古びてはいない。小さな身近な話を、より大きなものの喩えとする寓話的な方法で、加藤はその短い作家生活の中で、4回も芥川賞候補になっている(66回「玩具の兵隊」68回「酋長」69回「口髭と虱」74回「さらば、海軍」)。私の高校時代の担任の教師なのだが不慮の事故で49歳で亡くなっている。
アラ [2024/04/17,09:46:59]
Sシェフから「アラが手に入った」と連絡をもらい、お刺身と粗(あら)を分けてもらった。アラは日本各地でとれる魚だが、漁獲量が少なくキロ5千円以上はする超高級魚だ。九州では同じくハタ科の超高級魚の「クエ」を方言で「アラ」という。だからアラとクエを同じ魚だと思い込んでいる人もいる。このへんはまぎらわしいが、どちらも大型の深海にすむ魚であることに違いはない。アラを食べるのは初めてだ。刺し身はほとんどフグを食べているような触感で、滋味豊かで上品な味わい。しょうゆではなくポン酢で食べた。みそ汁に入れた粗(あら)は脂がのって何杯でもお代わりしたくなるほど。アラもクエも自分には関係ない高級魚と思っていたが、突然こんなこともある。とすればクエを食する日も、そう遠くはないのかもしれない。
アホの時代 [2024/04/16,10:33:21]
高校1年生の時、担任は英語教師の「とみおっこ」と、生徒たちに侮ったあだ名で呼ばれている風采の上がらないネズミのような小柄な人だった。秋田弁まじりの、訛りの強い英語を話すのも哄笑の種になっていた。家に帰れば趣味で小説を書いているという噂で、どう見てもパッとしない中年のくたびれたオヤジそのものだった。大学に入り、彼が芥川賞の候補に何度もあがっている作家で、「土俗と戦争」をテーマに、暗く重い田舎の物語を書いている作家であることを知った。でも本を買って読む気は起きなかった。無明舎を起ち上げ、その処女出版を刊行した時、お祝いのハガキを先生から頂いたが、返事は書かなかった。その加藤富夫氏が生前残したただ一冊の本、『口髭と虱』(文藝春秋)を、半世紀たった今読んだ。ずっとのどに刺さった小骨のように気になっていたからだ。本はとんでもなく面白い作品集だった。刺激的でユーモラスで、映画になっても不思議ではない物語がつまった作品集だ。昭和48年に出た本だから、無明舎を起ち上げた翌年である。こんなすごい人が傍らにいたのに気がつかない。青春というのは本当にアホの時代だ。

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