接写 [2024/10/15,09:13:52]
この年になると3連休がそんなにうれしいわけではない。ダラダラしてしまうのが落ちなので、逆に腹立たしいほどだ。でも、この3連休はけっこう有意義に過ごした。というのも、いつもの散歩コースを、カメラを携えて、観察撮影したからだ。テーマは「拙者の散歩道」。拙者は「接写」のダジャレで、いつも見慣れている風景の中に接写してみると、驚くようなモダンアートが隠れているのを発見した。たまたま1日目でそれに気がつき、2日目と3日目は意識して、普段見過ごしている小さな風景を狙って撮った。撮った写真はパソコンに入れ、何度も何度も見返しているのだが、自分で言うのもヘンだが、これがなかなかいいのだ。街角や路上の構造物の一断面を接写で切ろ撮っただけだが、接写になると、ほとんど現代アートの絵画にしか見えない。むらむら編集者魂が頭もたげた。これをHP企画としてアップしてみたらどうだろう……と今思案中だ。
「土の記」 [2024/10/14,13:31:03]
ようやく高村薫『土の記』(上下巻・新潮社)読了。面白かった、というか高村のミステリー仕掛けのドラマチックな定番の物語とは真逆の、静かで事件の起こらない珍しい物語だ。主人公の伊佐夫は70代。認知症のはじまった農民で、毎日、土を耕し、鯰や犬と遊び、茶畑の見回りをする。妻の裏切り(自殺)があり、娘はアメリカに移住し、孫娘はテニスに夢中だが、事件というような事件は起きない。代わりに日々の農作業がまるで「理科の実験室」のように子細に描写される。物語はほぼこの伊佐夫のモノローグ形で進行する。日々の出来事がまだらボケのように過去と交錯し、行きつ戻りつ、落としどころのないまま、ダラダラと続くのだが、そこは高村の天才的な筆力で読者を飽きさせない。その語りのうねりが、物語のダイナミズムそのものになっているのだ。帯文には「始まりも終わりもない、果てしない人間の物思いと、天と地と、生命のポリフォニー。」とある。農業への科学的に裏付けされた知識だけでも、一読の価値がある。昔、ある有名な編集者から、「医学の世界を舞台にした小説を書くことになった石川淳は医学書を徹底的に読みこみ、連載終了時には本物の医者と対等に論争できた」と聞いたことがあった。そんな作家の凄さを、この本の高村薫にも見た。作家ってやはりどうしようもなくすごい人たちだ。
恩恵 [2024/10/13,10:34:47]
お米の話題が続く。今年は「あきたこまち」が誕生して40年。大潟村が生まれて60年になる、農業県・秋田にとって記念すべき年でもある。この2つには、農業という以外、共通点がなさそうに思えるが、調べていると共通点がある。大潟村は日本農業のモデル農村として華やかにデビューしたのだが、そこで作られる米はお世辞にもうまいものではなかった。ただただひたすら食糧基地としての「量」を確保するため、国の造ったお米工場のようなイメージが強かったのだ。それが一挙に変わったのは、1984年に登場したあきたこまちだ。このスーパースターの登場で、秋田の米の評価は180度転換した。「秋田の米はうまい」という評判が生まれ、逆にまずい米を代表していた大潟村は、見事にこのこまちフィーバーの波に乗り「大潟村の米はまずくない」という路線変更戦略を成功させたのだ。あきたこまちというスーパースターの一番の恩恵を受けたのは、ほかならぬ大潟村だったのだ。
新米 [2024/10/12,09:24:16]
近所のスーパーで「サキホコレ」2キロを1700円ちょっとで購入した。お米を自分で(昼用)買うのは生まれて初めてで、サキホコレを買うのも食べるのも初めてだ。農家でもないのに、米を買ったことはない。いつも誰かから頂いていたから「米はもらうもの」と信じていた。米の味にはほとんど興味ない。だからそのへんの古米でも余り米でもいっこうにかまわない。逆に流行り物や宣伝過剰なものは口にしたくない
今年の秋田の米の作況指数は「やや良」(102)。この数字は悪くない。全国的には16年産以来の高い水準のようで、あの夏場の米騒動は何だったのか。ただし作況指数はあくまでモミの収量だ。品質が悪ければ精米できるものが少なくなるから、収量は落ちる。でもまあ不足ではない。サキホコレはまだ食べていない。今日炊いてみるつもりだ。
保管庫 [2024/10/11,09:45:17]
2階仕事場奥にある保管庫の整理整頓作業に入った。大きく分けて「服」「本」「食糧」の3点の断捨離である。保管行は六畳間ぐらい。資料本や家からはみ出したアウター衣類、水や保存食などが雑然と詰め込まれている。年一回は整理するのだが時期は決まっていない。なんとなくその気になった時が勝負だ。今年は猛暑が過ぎ、衣替えの時期に合わせる形で、2日前にスタート。本は段ボール3箱ぐらい捨て、服も同じくらいか。こういうものでも必要とする施設や団体に寄贈するのが理想だが、いまは古物をありがたがる処など、ない。マンガ倉庫のようなところでは有料で引き取ってくれるらしいが、これもちょっと抵抗がある。自分の着た服や読んだ本が「350円です」なんて言われるのは精神衛生上、いい訳がない。ゴミとして割り切るしかない。
稲刈り [2024/10/10,09:45:10]
太平山のザブーン周辺に「ニホンジカ」がウロウロしている、という情報を得て人間もチョロチョロしてきた。このへんで最近、角のりっぱな雄獣がよく目撃されているのだそうだ。死ぬまでに一度でいいからニホンジカを秋田で目撃したい、と思っている当方としては、すごいチャンスだったが、そううまく事は運ばない。シカにはあえなかったが、帰りはユフォーレで温泉に入り、ランチ(天ぷらうどん)。ここのうどんは秋田では珍しい関西風のお出汁でうまい。このあたりはいまが稲刈り真っ最中だった。今頃なんだ、とちょっとビックリ。9月中に済んでいるものとばかり思っていたからだ。途中、無人野菜売り場で、さつまいもと栗とネギを購入。計300円。すごくもうかった気分だ。
パソコン [2024/10/09,09:22:06]
ついにパソコン購入を決めた。友人のアドヴァイスで「マウス・コンピュータ」という会社の17インチのデスクトップだ。2,3日後には届く予定だが、なんだかホッとしている。というのも毎日毎朝、起ち上げるたびにフリーズや速度の遅さにイライラ、その精神的マイナスを考慮すると、お金には換算できない崖っぷちまで追い込まれていたからだ。朝からスムースに仕事のスタートが切れないのは大問題だ。そこから解放されるだけでも心弾むが、うまく使いこなせるか、そのあたりは不安でもある。でもまあ何とかなるだろう。パソコンに大きなことは期待していない。とにかく毎日、ブログを書き、HPを更新し、原稿やメールを書き、ストックし、参考資料を保存する。それだけで十分だ。早く来ないかなあパソコンちゃん。
固有感覚 [2024/10/08,09:50:34]
最近の医学研究で、シニアの腰痛は「足腰の位置や動き、方向について感じる動きによる異常」が原因のひとつ、という新聞記事を読んだ。体の位置や角度、動きの情報が中枢神経に送られ、それに応じて自律的に体のバランスを取るのだが、シニアは「固有感覚機能の衰えで筋肉の動きが遅れる」ことが、腰痛の原因なのだそうだ。私の突然の腰痛も、この理屈で考えてみると納得できる。ここ1週間ほど、寝床の読書で、いつもと違って分厚い本を持ち上げる無理な姿勢のまま、我慢しながら長時間本を読み続けた。それも片手に鉛筆をもち傍線を引きながらの態勢という「ほぼ仕事のような読書」だ。この姿勢と緊張感が体に負荷をかけ、その結果としての腰痛と考えると得心する。転んだり山を歩いたり、ひねったり重いものを持ったり、という行動結果による異常とはちょっと違ったのである。なるほど、固有感覚機能の衰えか。
腰痛 [2024/10/07,11:34:26]
仕事は少し忙しくなってきたのだが、腰が痛い。いつもなら疲れがたまって腰が痛くなると、散歩で意識的にストレッチをする。まあ、たいがいはこれでよくなった。ところが今回はもう3日間、ストレッチ効果なく、痛みが続いている。どうしたことだろう。寝返りを打つのがつらい。これ以上長引くと不安なので、近所の整骨院に行こうと思っている。ここはいわゆる対処療法なので、「痛みをやわらげる」だけで、痛みの原因が分かるわけではない。知りたいのは、なぜ、どうして急に、腰痛が出たのか、だ。疲労が原因なのは間違いないが、ソファーに横になる姿勢が問題のような気もしている。グジグジ言ってもはじまらない。整骨院に行ってみるか。
「なれのはて」 [2024/10/06,09:39:01]
気になっていた加藤シゲアキ著『なれのはて』(講談社)を読んだ。いくらミステリー仕掛けのエンタメ小説と言っても440ページの大著を読み通すのはしんどい。が、舞台は秋田市土崎だ。秋田の風土や文化、方言が重要な役割を果たす物語である。油田に関しては知らないことも多く、よくこれだけ調べて書いたものと感心するが(祖母が秋田の人らしいが本人は大阪出身でジャニーズ系タレントだ)、やはり物語の肝になる秋田に関する記述では、「え……?」という箇所が数えきれないほどあった。まあそこまで若い作家に要求しても、と思うが、これが文庫になったり大きな賞を取ったりすると、やはりこのあたりは大きな問題になる可能性はある。たとえば秋田マタギが登場するのはいいのだが「鹿や猪は身近な存在」と書いてしまう(どちらも当時の秋田には生存しない動物だ)。雪の描写や方言の遣い方にも、大きな瑕疵というか思い込みがある。たぶん編集者も若くて、このへんの細部まではノーチェックだったのだろう。エンタメ小説だから目くじらを立てなくても、と思うが、活字の世界はそう甘くはない。あまり売れなかったから問題は隠れたままだが、これが大きな賞でも取れば読者層は一挙に広がる。そうなると多くの人の目に触れ、問題点を指摘する声も必然的に大きくなる。そんな世界なのだ。

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