啓蟄
[2026/03/09,09:48:25]
二十四節気といわれても実生活ではピンとくることはない。でも「啓蟄」だけは別。啓蟄と聞くだけで、なんだか雪国の人間は無性にうれしくなってしまうのだ。冬ごもりしていた虫が土の中から姿を現す時期を表したものだが、これだけは掛け値なしに生活実感として共感がある。3月の初旬から中旬の終わりあたりまでがその期間だが、雪に苦しめられてきた人々にとって、土肌やその土の下の虫たちは、それだけでもう充分に愛情の対象なのである。待望の、雪のない、ものみな息吹く、正常な季節の到来、なのだ。その昔から、雪は「非日常」であり、戦場のような意識で、雪国の人たちは生きてきた。息をつめ、家の隅っこで、物音をたてないよう、静かに暮らしてきた。その雪が消え、土肌が現れ、虫たちがうごめき始めるのは、生の復権そのもののような、喜びだったに違いない。啓蟄はそんな喜びを表現している。さあ、外に出るぞ。
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