続・1年前 [2024/07/27,09:39:38]
去年の手帳を見返している。1年前7月、あの集中豪雨は秋田で長く生きてきたものにとっても「特別な大事件」のひとつだったからだ。その豪雨以外にどんなことがあったか、それを確かめているのだが7月末には、個人的には大事件がもうひとつあった。太りすぎが気になっていたのだが、夏に入るとついに猛烈な腰痛で歩けなくなった。急いで近所の病院に駆け込むと「初期の脊柱菅狭窄症で加齢によるもの」とあっさり診断された。そこでダイエットも兼ね、このころから散歩の途中に入念にストレッチ、上半身の柔軟性を意識して体を動かすようにした。ストレッチを始めると間もなく、腰痛はピタリと収まった。このころ「アマゾン紀行」の原稿を書いていて、そのために同じ姿勢で机に向かう生活がずっと続いていた。それが腰痛の原因だったのだ。ちなみに1年後の現在、体重は2キロほど落ち、ストレッチは続いていて、体調はすこぶるいい。もちろん腰痛は、まったくない。
1年前 [2024/07/26,09:10:04]
去年のあの凄まじい豪雨は、忘れもしない7月15日のことだ。1年後、また同じことが起きた。これはたぶん毎年繰り返されるのだろう。幸いなことに、私の住む秋田市周辺はほとんど被害はない。由利本荘と県南地区に被害は集中しているからだ。よく遊びに行く庄内の被害も心配だ。来週は夏休みで白馬に行くのだが、酒田市の友人夫婦も一緒だ。去年の日誌を読み返していると7月の月末には、猛暑の中でクーラーが動かなくなり、必死で隣町の量販店まで出張って、クーラーを買いに行っている。豪雨のため近所の量販店が被害を受けてしまったせいだ。あのクーラーのなかった1週間は苦しかった。今のところ突発的な事故はないが、油断しないで1日1日を、しっかり生きのびていくしかない。
甲州 [2024/07/25,09:40:16]
ネット記事だが、サッポロビールが経営する山梨の有名な勝沼ワイナリーが来年5月閉鎖が決まったそうだ。ワイン・ブームによって生産者は急増したが、若者のアルコール離れは進み、加えてブドウ農家の高齢化も深刻なのだそうだ。いや、ここで日本ワインのいくすえを云々したいわけではない。なぜ山梨県でワイン醸造が盛んになったか、という話だ。江戸の古来から明治・大正と、甲州盆地では日本住血吸虫という「死に至る謎の病」が大流行した。田んぼのなかでかかる風土病だ。その被害の甚大さに頭を悩めた県や国は、原因である田んぼを潰し、盛土して果樹園栽培に大きく舵を切った。これがのちのブドウ栽培へと結実する。田んぼの中にいる寄生虫対策としての、窮余の方策だったのである。そのブドウ栽培によって山梨は「謎の病」との闘いに勝利する。このへんは小林照幸『死の貝――日本住血吸虫症との闘い」(新潮文庫)に詳しい。その日本ワインの発祥の地がま危機に瀕している。日本のワインを飲むことはほとんどないが(高価なので)、甲州ワインの火は消えてほしくない。
新刊 [2024/07/24,09:29:02]
新聞と出版広告はセットだ。新聞を読むことは本の新刊案内に触れることでもある。この5年ほど、その新聞の出版広告にまったくと言っていいほど心動かされなくなった。これは読まなくちゃ、という新刊本がなくなったのだ。こちらの老化による好奇心の減退が問題なのだが、読書欲や購買力が落ちたわけではない。あいも変わらず月平均10冊程度の本は買っている。そのほとんどがネット書店からのユーズド文庫本だ。新刊を待ちかねて買っていたころに比べれば、買う冊数は同じだが、金額で言えばほぼ5分の一に減っている。中古の文庫本は郵送料を入れても500円以下で買える。金の面では助かっているわけだが、新刊本の手触りや清潔感のある紙やインクの匂いとはすっかりご無沙汰だ。過去に出版された本を読むだけで腹いっぱい。もう死ぬまで読む本に不自由しない。なるほど、これじゃ新刊は売れっこない。出版界の端っこにいるものとして、打つ手は何もないのが辛い。
牛丼とチキンラーメン [2024/07/23,10:00:41]
食べものに極端な好き嫌いはない。ただ「これは最近漁獲量が減って」とか「急に人気が出て」という理由で高価になったものは「もう食べないリスト」にすぐに放り込んでしまう。そんなことから数の子とかアワビとか中トロ、果物などは「意識的に」口にしなくなり、それで不自由に思うこともない。インスタントラーメンも苦手だ。牛丼チェーンも入ったことはない。でも最近チキンラーメンやレトルト食品の牛丼をよく食べるようになった。原因は山歩きだ。山行の朝はどうしても「朝食抜き」はきつい。手っ取り早く腹に掻っ込むには、このレトルト牛丼がピッタリ、ということがわかったせいだ。さらに山でのランチにはチキンラーメンの相性がいい。スープが練り込まれていて、具材はネギがあれば十分だ。カップラーメンを持ち込んだこともあったが、いつも残していた。チキンラーメンの練り込まれた素朴なスープが身体にあっているのだ。そんなわけで何十年も無縁だった、チキンラーメンとレトルト牛丼は、いまやわが事務所の常備品である。
梅雨 [2024/07/22,09:49:18]
週末の山歩きはなし。ダラダラと事務所で過ごしてしまったが、「毎週の前岳」というのは身体にこたえるから、いい休養になったかも。梅雨真っただ中だが思ったほど天気は悪くならず、今週の天気予報もずっと「曇りのち雨」。今週は仕事が少しバタバタしそうだ。そろそろバタバタしてくれなければ、干上がってしまう。夜の読書はずっとレヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」と格闘中。章立てがはっきりしているので短編小説を読むような気持で毎夜1章ずつ読んでいるのだが、難解きわまりない。訳者が悪いのでは、と人のせいにしたくなるが、この本は哲学書や文化人類学の専門書ではない。ブラジル旅行記」である。旅行記なのに哲学書並みに難解なのだから、世話が焼ける。でもここで放りだすと若いころの二の舞だ。粘り強く「戦い」続けるつもりだが、しんどいなあ。
オリンピック [2024/07/21,10:52:21]
テレビは高校野球とオリンピックばかりで、もう観る気もしない。興味のあるスポーツ以外に関心を持てと強要されても、いい迷惑だ。昨日、たまたま沢木耕太郎のオリンピック・エッセイ「夢見た空 オリンピックへの旅」という、彼が35歳ぐらいのときに書いた30年前のロサンジェルス・オリンピックのレポートを読んだ。実に面白かった。ロスのオリンピック観戦記を書くために、沢木はまず東ベルリンとモスクワを訪ねる。これだけでひっくり返りそうになる。オリンピック不参加を決めた国々を見て、それからアメリカに乗り込む算段だ。沢木の徹底的に自己本位な競技の見方も実に爽快で気持ちいい。スタート前に笑顔で他の競技者に握手を求めるカール・ルイスの「演技」を唾棄し、長崎宏子の「負けた安堵感」を見逃さない。圧巻はマラソンの瀬古の監督である中村のインタビューだ。自分が病気をしたせいで瀬古は負けた、という中村の発言を「それはあなたの傲慢だ」と、怒りをあらわに反論しているのだ。面と向かってインタビュアーが「それはおかしい」と喧嘩腰になるのだから真剣勝負だ。こんな同時代の才能あふれるスポーツ・ライターがナビゲートしてくれるオリンピックなら、どんな競技でも楽しいに違いない。それにしても30代でこんな文章を書く沢木耕太郎という人の才能に、あらためて敬意を覚えた。
驚いた! [2024/07/20,09:30:06]
近頃のニュースで驚いたこと。毎日新聞の富山県の配布休止。富山県内の発行部数が840部というのにもショック。秋田や東北各地も似たようなものなので、こっちに飛び火するのも遠くはないかも。山形県の「1日1回笑うことに努める」という条例制定にもあんぐり。草葉の陰で井上ひさしさんは怒っているだろうなあ。政治や権力が「内心の自由」にまで踏み込んでくるとロクなことはない。ニュースではないが、先日、能代に行ったついでに吾作ラーメン本店に寄ると、昼時100人以上の行列ができていた。秋田で100人近い行列を見たのは初めてかも。近所にも吾作ラーメン店はあるのだが、本店とは味が違う。並ぶのがいやなので入らなかったが、駐車場のナンバーは東北各地から。これも驚いたなあ。
フォークダンス [2024/07/19,10:09:50]
中高時代、女子と手をつなぐ機会などめったになかった。唯一例外は文化祭で、フォークダンスの時だけは公然と手をつなげた。そのせいか、今でも「マイムマイム、ミィマイム、ベサソン」という歌詞をちゃんと覚えている。でもこの言葉って何語なの? と不意に75歳の偏屈なジッコは疑問に囚われてしまった。調べてみるとなんとヘブライ語だった! ユダヤ人の旧約聖書の中にある一節から採った歌だったのだ。マイムは「水」、ベサソンは「喜び」で、砂漠に井戸を掘り当てた時に舞い歌うものだった。イスラエル建国の時、キブツといわれる協同農場で、ユダヤ人たちが楽しそうに農作業の合間に歌い踊っていたものが、あのフォークダンスなのだ。イスラエルのガザ侵攻と極東の島国の辺境の雪国は何のつながりもない、と思っていたが、70年も前から実は見えない糸で結ばれていたわけだ。あの「マイムマイム」がヘブライ語だったとは……。
長編 [2024/07/18,09:43:38]
夏休みに何か記念になるような「長い物語」の本を読もうと思うのだが、決定打が難しい。古典や名作の類が無難で、その手の長編には事欠かないのだが、途中挫折が怖い。できれば最後まで手放せない面白い物語が読みたい。考えた末の結論は、井上ひさし著『四千万歩の男』(講談社文庫)全5巻だ。長さもテーマも質も文句ない。これに決めた。50歳を過ぎてから16年をかけて日本地図の実測図を完成させた伊能忠敬を描いた物語だ。これを読み通せば、物語の長さでは自分の最長記録になるはずだ。「歩く」ことには人並み以上に興味がある。これがこの本を選んだポイントなのだが、井上の本は難解さの壁もいくつか仕掛けられている。根気強く付き合っていくしかない。

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