モノクロ [2025/04/30,10:41:22]
録画していた映画を見る。成瀬巳喜男監督の『山の音』とビリー・ワイルダー監督『昼下がりの情事だ。ふつうにテレビ放映されたものを録画したものだが、どちらも1950年代に撮られたモノクロ映画だ。基本的に映画はモノクロ映画、というぐらいモノクロが好きなのだ。「山の音」は川端康成原作で、この時点であまり期待はしていなかった。ユーモアがないのがつ致命的だし、主演の原節子が、いつものように何の映画に出ても同じ表情、演技なので、すべてが予定調和、広がりのない映像になってしまう。「昼下がり」はもう3度目ぐらいだが、昔見たストーリーを忘れているので、何度見ても面白い。ワイルダーは「寅さん」の山田洋次だ。何度見ても面白い。自分が生まれたころ、あるいは10代につくられた映画を見ることは、記憶のないその時代をしのぶ「よすが」になる。ああ、こんな時代に自分は秋田の片隅に生をうけたのか、という思いで見るモノクロ画面は、それだけで親近感がある。
飛脚 [2025/04/29,10:41:41]
昨日の続き。『飛脚は何を運んだのか』は興味深い一冊で、一晩で読了してしまった。手紙や荷物を運ぶ飛脚の存在は平安時代末期までさかのぼる。鎌倉時代の絶え間ない政治対立と戦争が飛脚を生みだした理由だ。江戸時代にそれはビジネスとなり、明治に入り政府は飛脚問屋との契約を打ち切り国営郵便制度設置に舵をとる。戯作者・馬琴の日記を手掛かりに、飛脚の歴史的役割を文献資料で裏付けていく構成、展開は見事だ。一言で飛脚とはいっても、人間が荷物を運ぶものと、馬荷物を監督しながら街道を往来する「宰領飛脚」がある。人と馬の2種類あったわけだ。この宰領飛脚の存在が面白い。このへんはもっと詳しく知りたかったところ。巻末近くで「きつね飛脚伝説」にも詳しく触れている。きつねと飛脚といえば秋田市の「与次郎稲荷」だ。なぜ飛脚ときつねは相性がいいのか。そのきつね飛脚伝説が、なぜ日本海側に多く残されているのか……興味尽きないトピックスが満載だ。メモを取りながらもう一度読みたくなった。
新書判 [2025/04/28,09:49:20]
『飛脚は何を運んだのか』(ちくま新書)という本を読んでいる。面白い。この本、単行本より一回り小さい新書判なのにページ数は410ページもある。普通、新書判は150ページ前後が平均ページで、単行本にするには原稿枚数が少ない作品を本にするために編み出された方法だ。それが410ページもある新書判ということになると、ほぼ形容矛盾といってもいい。どうして「普通の単行本」ではダメだったのか、と疑問に思う読者もいるだろう。これは今の出版業界の苦しい台所事情を反映している。この本を普通の単行本にすれば350ページ前後の、定価は今の相場で2千円超え、初版3千部というあたりが妥当な線だ。しかし、原稿枚数はオーバーだが、テーマは面白いし、定価さえ安くできれば、もっと部数は行ける。そこでページ数は増えても制作コストが安く上がる新書判にして、定価を1300円にしてしまえば、初版は1万部が可能だ。新書判は廉価で読みやすい、という読者の安心感に寄り掛かっての選択なのだ。2200円で3千部と、1300円で1万部なら、版元は躊躇なく「分厚い新書判」のほうを選らぶ……というのは、田舎の出版社オーナーである私の独り言。でもまあ間違っていないはずだ。
大人買い [2025/04/27,09:31:22]
新聞の書評欄を見て面白そうな新刊を5冊、まとめ買いした。合計金額が1万円を超えていた。本の定価が2千円から3千円台になったので、5冊ぐらいでもこの額は行ってしまう。最近は、ちまちま文庫本の、それもユーズド狙いのけち臭い本ばかりだったから、これが「大人買い」というやつだ。そういえば先日、モンベルで同じシャツの色違いを5枚買った。同行者から「大人買いしますねえ」と呆れられたし、同じく数日前、事務所での料理に欠かせないカセットコンロの調子が悪くなり、これは一大事と後先考えず、イワタニのもっとも高額のコンロを、何の迷いもなく買ってしまった。これも大人買いだ。普段はほとんどお金を使わない、エンゲル係数だけは高い、質素な生活をしているのだが、春先は金銭感覚もおおらかになってしまうのだろうか。まあ仕事も忙しいから、これぐらいのぜいたくは許してもらおう。
仕事日和 [2025/04/26,11:24:38]
今日から世間はゴールデン・ウイークのようだ。こちらは相変わらず、「いつも通り」だ。どこもかもが混みあう時期に、わざわざその場所に行く人の気が知れない。大谷フィーバーになればロスまで野球を見に行き、サッカーのためなら仕事を休み金に糸目もつけず南アフリカまで出かける人たちの気持ちが、まったくわからない。まあ田舎者の野暮天なのだが、そこにかける金と時間を、少しでいいから私に譲って、思ってしまうのが本音だ。みんなが浮かれて外に繰り出す時は、家でじっと仕事をするのは意地の悪い快感でもある。あまのじゃくだなあとは思うが、これが自分、と昔からそのスタイルは変わらない。もう死ぬまで直らない。GW初日は薄曇りの晴れ。絶好の仕事日和だ。
ゴム採集人 [2025/04/25,10:12:59]
録画していたNHK教育テレビ「緒形拳のアマゾン紀行」を見た。92年の制作だから、もう30年以上前の番組だ。俳優の緒方がリオのファベーラ(貧民窟)を訪ね、そこからアマゾンへ飛び、セレンゲイロ(ゴム採集人)といわれる人々を取材する。ほとんどしゃべらないインタビュアーの緒方と、言葉の通じない現地の人たちの、「寡黙なやり取り」が実に面白いのだ。リオのファベーラと、アマゾンのセレンゲイトをつなぐ共通点は、住民がノルデシチ北東部の出身なこと。セリンゲイロの英雄といわれるのがシコ・メンデスという人物で、彼はゴムの採れる森を守るため、開発業者たちとの戦いに命を懸け、のちに暗殺される。その彼の面影を緒方が追う旅の記録なのだ。なのに緒方の口からは具体的にメンデスのことが語られることはない。時として、じっと原生林の中に佇んで沈黙を貫く緒方から、メンデスの影がのぞく気配を感じる、だけだ。この寡黙なドキュメンタリーは、多くのことを見るものに語りかけてくる。今のドキュメンタリーの作り方とはまるで違う、ひとりの俳優の個性に多くのことを委ねた番組だ。この当時、すでに忘れられた「ゴムの採集人」にスポットを当てた番組を、日本人が作っていたことにも、かなり驚いた。
ハローワーク [2025/04/24,09:37:34]
生まれて初めてハローワークを訪ねた。私が職を探しているのではない。パートをしてくれる求人のチェックのために訪ねたのだが、結局、いまはパソコンですべて家にいて手続き可能なのだそうで、拍子抜けだ。でも一度は行ってみたい場所だったのだ。ローカルテレビ局などが生き残りをかけて人材派遣業に乗り出している。ネットにはこの手の職業あっせん業があふれかえっている。ハローワークそのものは、もう役割を終えたのかもしれない。幸か不幸か、この施設のお世話にならずにこれまで生きてきた。いや、市内西側に蝟集する多くの公共の施設や機能を、ほとんど使うことなく、後期高齢者になってしまった。滞ることなく税金を納めてきたのだが、まあこんなものなのだろう。威容を誇る「税金で建てた建造物」を見るたび、ちょっぴり複雑な心境になる。
病院 [2025/04/23,09:22:47]
ようやく近所にかかりつけ医を見つけた。同じ町内にある、近代的で明るく大きな、最近できた個人病院だ。何のアポもなしに飛びこみ、前の病院の紹介状を差し出したら、「はい、いいですよ」とすんなり受理された。そのままマスクを着けられ、医師とも面会。想定外の速い展開に、こちらが面食らってしまった。今年1月の人間ドックの健診票をチェックしてもらい、そこではじめて「尿酸値」が高いことを指摘された。痛風の症状に悩まされていたのはもう昔で、いまは症状もなく、すっかり改善されたものと安心していた。「この数値はもう一回血液検査したほうがいいですね」と言われ、次回薬をもらうときに検査することになった。受診前にはかった血圧も、いつもなら140前後なのに170まで上がっていて、看護師さんから「少し高いですねえ」と言われてしまった。血圧といい尿酸値といい、なんだか昔の悪事を初対面の人にばらされたみたいで落ち込んでしまった。でもまあ、近所に長く付き合えそうな病院が見つかった、というだけで良しとしようか。
ロッキング・チェアー [2025/04/22,08:53:17]
何となく昔から「椅子」には興味があり、椅子だけは高価なものを買う癖がついている。この年になっても腰痛と無縁なのは、たぶん家でも仕事場でもいい椅子に座っているから、と勝手に思っている。先日、湯沢市の秋田木工の定期バザー(特売会)を冷やかしてきた。会場入り口に目玉商品の、その日一番の高価なロッキングチェアーが展示されていた。33万円のものが10万円引きの23万円。すぐにもちろん気が付いたのだが、これは、わが寝室で愛用しているロッキングチェアーと100パーセント色も形も同じもの。エエエエッエエッと驚いたが、私が手に入れたのは20年ほど前。秋田市のデパートで秋田木工のバーゲンセール品として確か6万円で買った記憶がある。その点を恐る恐る店員さんに尋ねると、「それはうちが倒産した時の投げ売りですね。もうこのモデルはありません。いい買い物しましたね」と言われた。6万円のものが20年たって5倍の値段が付いていた、のではなく、30万以上のものが当時たまたま5分の一の値段で買えた、のである。家に高価な骨とう品など一つもないことを、逆に自慢にしていたのだが、いやいや、秋田木工の名品の椅子があったわけである。これからは自慢しよう。
ニトリ [2025/04/21,09:10:24]
昨日はあいにくの雨。Fさんと二人で湯沢までドライブ。帰りは下道を通って、いろんなところを寄り道しながら、帰ってきた。いいリフレッシュになったが、国道13号線を走りながら、過去のいろんなことを考えてしまった。高速道ができるまで、毎月のようにこの13号線を走っていた。今も13号線にはその面影が残っている……どころではない。ほぼ30年前と同じ光景が残っていた。これはショックというか、胸の痛くなるような風景だった。同時に当時のいろんな出来事も思い出され、人も風景もそんなに簡単に変れないのだ。国道沿いにあるニトリに立ち寄った。そこで夏物の寝具類をまとめ買い。秋田市にもニトリはあるが、小さな旅先で会うニトリのほうが、なぜか購買意欲がわく。さらに判断力も抑制され適正になるようだ。地元のニトリだと、買い物も日常の延長線なので、あれこれ目移りばっかり。旅先のニトリは最低限必要不可欠なものしか手が伸びない。寝具のほかにも、ずっと気になっていた夏用スリッパ類も買う。よかったよかった。

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