ヤマハゲ
[2025/01/13,12:48:15]
秋田市豊岩地区の伝統行事である「ヤマハゲ」を見に行ってきた。本家本元の男鹿のなまはげも観たことがないのに、いきなり超マイナーな「観光客ゼロ」の集落行事というのも問題だが、ま、自分らしいかも。驚いたことはいろいろあるが、本家のなまはげを見ていないので、眉に唾つけて読んでほしい。ヤマハゲには鬼に威厳がある。「沈黙の畏怖」のようなものだ。家々を訪ねても、あいさつ程度しか言葉を発せず、子供のいる家では「ウォー」と2,3度、奇声を発するのみ。信じがたいほど寡黙なのだ。それがまた怖い。コマーシャリズムに毒されていないぶん、装束も質素で重々しい。般若を想起させる着色なしの手彫りの面、八郎潟の「藻」で編んだというモグと呼ばれる髪を被り、藍で染められた分厚い夜着は「夜ぶすま」と呼ばれる。ケラも着けないし、藁沓に素足。雪道ではいかにも寒そうで、まともに見ていられない。男鹿のなまはげのような観光的ユーモアもこけおどしもない。それがいかにも異界から来た妖怪を感じさせる。子供たちは本気で家の中を泣きわめき逃げ回る。鬼たちは家に入り込んでまでえ追い掛け回したりはしない。子供たちが観念して玄関先に出てきたら頭をなでて、あっさり家を出る。雪の闇夜から、こんな寡黙な鬼が出てきたら、大人でもちょっと怖いかもしれない。いいものを見せてもらった。
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